ジオラマづくりの最初の一歩は、ほんの少しの起伏から。/GSIクレオス 軽量石粉粘土

 カッティングボードに男が一人。オレはプラモを取っ手付きのまな板に固定してしまうのが好きだ。上品な木目、適度な重さ。誰かに見せるときも、持つべき場所があるからヒヤヒヤしなくていい。プラモの大きさに合わせてカッティングボードを買ってもいいし、家に新品のままいくつもストックしておいたいろんな大きさのカッティングボードに合わせて何を飾りたいか考えて作り始めたっていい。ニトリでも、IKEAでもいい、「インスタ映え」という言葉が市民権を得るのと時を同じくして、料理を魅せるためのカッティングボードが安く買えるようになった。

 荒涼とした木の平面の上に大地を作りたくなったら、薄いプラ板を手に入れよう。カッティングボードよりひと回り小さく、好きなカタチにマジックでギューッと線を描き、そのとおりにハサミで切っていく。カッティングボードの輪郭を丁寧にトレースするより、ひと回り小さく切ったほうが可愛く仕上がるはず。これは他人の受け売りなんだけど。

 コンクリなのか土なのか、雪の大地かはあなた次第だ。今回は砂漠の端っこで細々と維持されている駐屯地のようなイメージで、1/3を砂の積もったところにして、残りは格子状にカッターでスジ彫りを入れてから適当にグラデーションの入ったグレーで塗っておいた。「ああ、人工的な地面なんだな」という気分が伝わればラッキー。

 奥に起伏がほしいな、と思って模型店に備えられた「粘土」のコーナーを眺める。いろいろあったけど、用途に「ジオラマ」が含まれる(そして模型用具メーカーが作っている!)GSIクレオスの石粉粘土を買ってきて、おもむろに地面に擦り付けてみる。軽くて、柔らかくて、指馴染みがよい。湿り気のある粘土を触るのはいつぶりだろうか。撫でて、伸ばして、地面に凹凸を作っていく。まるで神様だ。

 奥行きに限りのある地面を写真に撮ると、その向こうは奈落に見えてしまう。だけどどうだろう。こうして石粉粘土をほんの数mm盛り付けるだけで、スパっと切られた此岸と彼岸はなだらかな曲線によって馴染み、そこに小さな世界があるように見えてくる。なんとなくわかっていたことなのに、最初の一歩が踏み出せなかった。ほんの少しの地形が、模型の実在感をググっと高めてくれる。石粉粘土は、そんなワンダーにいざなってくれるいちばん身近なマテリアルなのだ。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。