電撃的な出会いでした。箱の横に描かれたイラストがもうめちゃんこカッコ可愛いと思ってしまったのです。二段になった顔、後ろに向かって機銃も撃っちゃうし、なんか機首の下にもポコっとガラスの部屋が張り出している。何より全長に対してやたらめったら背の高いこのシルエット、とってもキュートじゃないですか……。
ブリストル ボーフォートという名前のこの飛行機。コイツがいったい何なのかは家に帰ってから調べるとして、お店でこれをムンズと掴んで買ってしまっていいものなのかどうなのか。ハコはビンビンの最新モデルっぽいけど中身がすごいベテランだったりするとなかなかしんどい。こんなとき、どうする。
「モデル・デザイン・アンド・ツーリング 2020」……つまり、設計と金型製作が2年前だということがパッケージサイドにちゃーんと書いてありますね。メイド・イン・インディアなイギリスのムチムチ飛行機、一丁お買い上げです!みんなもエアフィックスの赤いハコを見つけたらパッケージサイドの文言をちゃんと読もう。スマホを取り出していちいち検索しなくても製造年が書いてあるぞ。
まりまりと内袋を開封してご対面。エアフィックスの1/72ヒコーキ模型にしてはちょっと多めな5枚のランナー。真ん中に鎮座するのはコイツ、魚雷です。ボーフォートはシュッとした形の爆撃機を原型に、大海原で敵の船をやっつけるために設計された雷撃機と呼ばれるタイプの飛行機。魚雷or爆弾を腹に積んで、低空をブーンと飛んでいくわけですね。敵に攻撃されたら反撃しなきゃいけないし、ジャストタイミングで魚雷を投下しなきゃいけないし、とにかく仕事が多いのでこの飛行機はなんと4人乗り。そりゃでかいわ。
コクピットがあって、その後ろに無線やらなんやらを操作する席があって、あとは後ろで機銃を撃ったり……なんか前に横向いた喫茶店の椅子みたいなのが突き出してますね。「マスター、アメリカンを一杯くれよ」っつって。こういうのがプラモを組んでいるとすげーよくわかる。Wikipediaには「4人乗りである」としか書いてないので、彼らが何をしていたのかをプラモのパーツから想像するのが楽しいわけですよ。
胴体の内部にこれを収めると、なるほどこんなサイズ感か。ちょうど魚雷や爆弾を入れるぶんだけ背が高くなってるんだな……というのがよくわかる。この秘密基地の断面図みたいなのをシコシコ組み立てていくのが面白い。組み立てて形ができて、なるほどなるほど!いやー、この飛行機に一目惚れして正解だったなこりゃ!というのを2000円ちょいで楽しむゲームだと思ったら、かなりコスパがいい遊びだと思うんですよねプラモ。
海外のプラモは難しそう!なんて思う人もいるかもしれませんが、ここ最近のエアフィックス製品は本当にすごい。しかもこのボーフォート、私が組んだエアフィックス製品のなかでも最新のアイテムなので「さらに出来るようになったな!」と思わず声が出てしまうくらいビシッと合います。胴体と翼の隙間なんて皆無。どこもかしこも流し込みタイプのサラサラ接着剤をスッと置けばシャキッと組み上がります。えらいなぁ。
鼻歌交じりで40分のフライト。ここまでカタチになると飛行機の全体的なシルエットが見えてきます。主翼の前後幅が大きいのと、途中で少し折れ角がついているところ、胴体がよく見ると下膨れの断面になっているところなどなど、とにかく見ていて飽きない。どこもかしこも変化がある。意外な形の集合体なんですね。それに加えて頭でっかちなスタイリングがすごく頑丈そうな雰囲気を放っていて、「おまえ、シューティングゲームの自機なら3タイプうちの、めっちゃカタくて弾の連射速度が遅い奴だな?」という感じなんですよ。ということでですね、シューティングゲームでめっちゃカタい奴を選びがちなアナタは絶対にこの飛行機好きになります。いいんですよ。一目惚れで買っても。組んでるうちにだいたい好きになりますから。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。