なんとなくDEAN & DELUCAに入り、「なんか美味いもんないかな〜」と棚の間を巡ると、本当にいろんなハジメマシテがある。2色の層になったジャムや、目もくらむような値段のオリーブオイル。どれもこれもスタイリッシュなパッケージだし、そのへんのコンビニやスーパーでは出会わないような食材もたくさん。
そのなかで目を引いたのがパスタソースのコーナーにあった缶詰。手にとって裏返してラベルを見るまで、パスタソースだということもわからなかった。恐るべき値段だったが、これが美味いのかどうかは食べてみないとわからない。ちょっと背伸びして買って、週末の昼に食べてみよう。
絡めるパスタは幅の広いのが良さそう。麺まで高級品である必要はないだろうと、近所のスーパーで調達してきたタリアテッレを茹でる。ガッツリした食感と、ソースとの接触面積がデカそうなのが良い。茹でる前の見た目もくるくると丸まっていて可愛い。ヘイSiri、タイマーを6分に設定して。
麺を茹でている間に、「魚とトマトとハーブのラグー」の缶詰をオープン。フライパンで火を入れる。ラグーというのは「煮込んだもの」くらいの意味で、つまりこれは魚(スズキ)とトマト、オリーブ、ケッパー、アンチョビといったキャラクターの強いものたちを一緒に煮込んだパスタソース。温まってくると一気に香りが立ち、リビングのソファでテレビを眺めている妻から「わ、レストランみたいな匂いがしてきた!」と大きな声が聞こえる。
パスタの茹で上がり前後はシロウトがむやみに盛り上がる時間だ。少し短いほうがアルデンテになるのでは?とか、このあとソースと絡める予熱でダルダルになってしまうから指定より短いほうがいいのでは?とか、だいたい短い方に賭ける。カップラーメンとかカレーメシとかでもそうだ。そして大体「やっぱちょっと硬いな」と思ったりするから、今日は袋に指定されたとおりの時間、きっちり茹でる。
タリアテッレをトングで残らず掬い上げ、ついにフライパンでソースと邂逅。この時点でもうヨダレが出そうなほどいい香りといいビジュアル。手早く絡めて、最後にツラっとオリーブオイルをひとまわし。1人前810円もするパスタソース(2人前だから1缶で1620円だぞ!)なんて人生初体験。麺の安さがちょっと不安になるぜ……。
作る時間はじれったく、食べるのは一瞬。料理……というほどじゃないけれど、新しい食べ物に挑戦するのはいつだって楽しい。ところで、なんでパスタの話をしているのかって?
このシュトゥルムケーファーを塗ろうと思ったのは、食べたら消えてしまうパスタソースの思い出を残しておけるなと思ったから。 食べ終わってから、改めて缶と模型を見比べて「なんだ、よく見たらガンダムと同じ取り合わせだな」というオチがついたところで、また休みの午後に買い物へと出かける口実を探してしまう。めったに足を踏み入れなかったけれど、改めて眺めるDEAN & DELUCAの良いところは、こんな素敵な色彩感覚の商品をピシッとセンスよく取り揃えているところ。僕はそれをちょっぴり拝借して、食事とプラモを一緒に楽しんだというわけだ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。