The Colour and the Shape/筆で叩けばロックンロールな海洋堂のシュトゥルムケーファー

 下ごしらえの済んだプラモは最高。なぜならいつでも塗り始めることができる。だから「塗る気」じゃない日はどんどん下ごしらえをして、ジップロックに入れてます。冷凍庫に茹でたブロッコリーとかを入れとくのと同じ。
 ……ということで、海洋堂の1/35 シュトゥルムケーファーは上のようなバラバラの状態で黒い下地塗料をガバーッと吹き、机の脇の見えるところでずっと待機していました。「ふとした瞬間に塗りたい色彩がババンと降りてきたら、一気に塗るぞ」と思いながら2ヶ月ほど。そしてその時が来たのじゃ。

 黒の上から筆に含ませたホワイトを乗せていきます。ツンツン、ガサガサ。たっぷり含ませたときと、カサカサに乾燥してきたときで乗り方が全然違う。下地が溶剤で溶けてグレーになってもビビらない。塗り残しても、怖くない。真っ白にしたければスプレーでも吹けばいいわけですが、こんなふうにムラとボコボコを愛するのが筆塗りの楽しみのひとつです。……っていうか、これは「筆じゃないとできないこと」だから、自信持ってやろうぜ!

 うわー、黒い下地めっちゃ見えてる。でも見えてるのがいいのだ。次に行こう。こんどはピンクだ。どピンクだとファンシーすぎるので、少しだけ黄色を入れてサーモンピンクにする。なんとなーく、ボディの中央部にガツーンとピンクのストライプが入っているのがかっこいいような気がする。ラインを引くときにもマスキングはしない。入れたいところに筆で線を入れる。キワがヨレてもビビらない。マスキングで作るカキっとしたラインじゃなくて、なんだかちょっとボケていて、手作業に見えるストライプを入れる。これだって、筆じゃなきゃなかなかできないこと。自信持ってこ。

 こんどはスカイブルーです。さっきのサーモンピンクと隣り合っても喧嘩しないように、青にも黄色と白をちょっとだけ入れてなじませる。微妙な色合いだな、と思うかもしれないけど、今回はごくごく普通の赤白黄青の瓶だけを用意して、それを目見当で混ぜてるだけ。人力CMYK職人でございます。赤と青が隣り合うところもカキっと塗り分けず、かといってキレイなボケを筆で演出!でもなく、ただ乱暴なだけ。近くで見たら「なんじゃそれ」でも、ちょっと離れて見るとこれまたファジーな味わいが美味。自信というか、そういう確信で進む。なんだかエラそうですが、私もこういう筆塗りスタイルは普段あまりやらないので、おっかなびっくりの大冒険なんです。

 赤をほんの少し足した黄色を青の隣にチョイっと入れる。もうみなさんこんなドアップの写真を見たら「うわー、筆ムラ凄いし塗膜はボコボコだし、大丈夫そ?」って思うかもしれません。しかしこれはオレの模型だしオレが筆でツンツンしているのが楽しいので、塗っている当人はすこぶる楽しい。色は決まってても、置く場所はアドリブだし、言ってみればフライパンにアドリブでどんどん食材をぶちこんで作る謎の「炒め」があるじゃないですか。ああいう勢いの良さと、食べてみたら「まあ、イケるな!」というライジングがあるわけですよ。

 最後にプラモの要諦をビシッとシメてくれるのがデカールよ。なにが「6」なのかは置いといて、そこにカキっとした文字が入ることで全体が精密であるかのように錯覚するんだよね。デカール大好き。
 ということで、わがままボディなシュトゥルムケーファーを筆でナデナデした休日。「筆塗り、どうすれば綺麗にできますか?」という質問もよーくわかるけど、まずは「イカしたドラマーになったつもりで、筆でプラモの表面をスタタタと叩くとそれだけで楽しいんじゃ」というのをお伝えしたい。最後に筆を握って絵の具を塗ったの、中学生のときだなぁ……なんてアナタにこそ、「色が付く快楽」を。

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からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。