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そのカタチを純粋に思い出すプラモデル/ハセガワ MR2

 何歳の頃か忘れたけど、ずいぶん小さいときに東京モーターショーでこのクルマを見た。ミッドシップとかランナバウトとか、そういう言葉をいっさい知らない子供にとっても、このクルマの横から見た「凸」な形は鮮烈な印象だった。小さくてもカクカクしていて、塊感とパワフルそうな雰囲気が伝わってきたんだと思う。
 オトナになって見るMR2はいろんな知識の裏付けがあるので、そこに漂う時代感を嗅ぎ取ってしまったり、海外の流麗なスポーツカーとはちょっと違うドメスティックな空気についての論評に頷いてしまったり、まあとにかく、MR2というのは不思議な自動車である。

 最近、日本のちょっと古いクルマを精力的にプラモ化しているハセガワのMR2は箱の中からその「凸」がボコンと飛び出してくるのが面白い。幼稚園児が描く「じどうしゃ」形そのものに見える。しかし、むんずと掴むとゴツゴツした輪郭に似合わず車格が異様なまでに小さいことに気づく。子供のときの印象とオトナになってからの印象が、同じものに対してもずいぶん違うというのはプラモを作っていると「あるある」な現象だ。

 ハセガワのクルマ模型を買った人は、いつだってシャーシのウラに注目してほしい。完成してしまえばほとんど見えなくなってしまうのだが、本当に几帳面にプレスの形状が表現されている。

 このクルマの構造がいちばん再現されているのは後輪まわりだろう。シンプルなパーツ構成だが、横置きのギアボックスからドカッとドライブシャフトが突き出ていて、前輪とは違う仕組みのサスペンションがあり、そこに無理やり折り畳まれた排気系が絡む。ここまでできているのだから、ミッドシップエンジン・リア駆動のこのクルマのドライブトレーンもしっかり再現されているのかな?と一瞬思ってしまう。

 が、「エンジンのパーツ」と呼べるのは裏面から見える最下部と、上から見えるシリンダーヘッドカバーだけなのである。本来は深さのあるエンジンルームはほとんど板として表現されていて、その上にエンジンの最上部がちょこっと彫刻してある。エンジン廻りのごちゃごちゃした補機類を再現するパーツが大量に用意されているわけでもなく、かなり割り切った構成。つまるところ、このプラモは「エンジンを再現すること」が目的ではないのだ。

▲模型化されたグレードを象徴するスーパーチャージャーも随分シンプルなパーツをポンと乗せるだけ!

 キャビンは一般的なカーモデルのそれ。その後ろにエンジンルームがあって、前後のオーバーハングが小さい車体がなんとなく見えてくる。裏面の構造がぎっちり再現されているから「模型は構造を楽しむものだよね」と思ってしまいがちなのだけれど、じつはこの模型はMR2のスタイリング……つまり「初の国産ミッシップ市販車」が背負ったあまりにも独特のディメンションと、どこか煮え切らない(が、むしろそこに味がある)アウトラインを味わう方向に終始した設計になっているのかもしれない。

 シャーシとボディのハメ合わせはかなりタイトで、組み付けているとボディがバキッと割れてしまうのではないかと心配になるほど。しかし、ひとまずクルマの基本形が出来上がるところまで走ってみると、ふと「あのときモーターショーで見たMR2だ!」という強烈な既視感が襲ってきた。
 カーモデルを丁寧に塗って組み上げるのはなかなか難しい。だけど、こうしてグレーと白とメッキパーツが用意されていると、ただスタイリングを楽しむだけでも結構な驚きや発見がある。言われてみればエンジンだってフタを開けなければ見えないわけで、ひとくちに「カーモデル」と言ってもそこに込められた機能というのはさまざまであるのだな、と改めて感じた一台だった。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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