ミリタリーキューティーズのみゆきは、「究極のプラモ」かもしれない。

 タニノクリスチーというイタリアの靴のメーカーがあって、元は貴族の馬具を作ってたとかなんとかで、そうとう由緒正しいメーカーです。履き心地の評価は概ね良く「魔法の靴」なんて呼ばれることもあります。その中でも名靴と呼ばれるものはいくつかありますがマッケイ製法で作られたジョッパーブーツは最高峰のモデルの一つ。

 イタリアで修行した靴職人に「タニノクリスチーはどうですか?」と聞くと「同じデザインで作っても野暮ったくならないのはあそこだけ」という話もあります。少し高めのヒールは不思議とピンと背筋が伸び、なおかつソールの屈曲性を高めるために体重のかかり方をコントロールしている。革質はしなやか過ぎると言いたくなるほどの柔らかさときめの細かさくるキラキラとした艶。一番好きなシューメーカーです。

 ミリタリーキューティーズのみゆきの箱を開けたときにタニノクリスチーを履いたときと同じような感覚を覚えました。今まで作ったどのプラモデルよりも美しいパーツ。分割の面白さに目が行きがちですが、手先の表情、膝の周りの曲面の美しさなど、それぞれのパーツに意思があるような力強さを感じました。インカムのマイクなんかピンっと細いところはめちゃくちゃ細いし、髪の毛はドローンレースの優勝者がコース上に描いた3次元的なラインに等しい。とにかく「表現」と「形にする意思」が高い次元で融合しているからこその危うさと美しさを感じます。

 それでいて律儀に3色で色分けしているのだからもうなにも言えない。ここまで綺麗だと一瞬「上級者向けなんだろう」「塗装しないといけないのだろう」と思いますが、最低限の色分けによる「プラスチックそのものの美しさ」は担保されているというわけ。我が家にはまだほとんど履いておらず、眺めているだけのタニノクリスチーが一足ありますが、みゆきも入手性の観点からそんな感じになりそうです。

 ただ、みゆきは再販される日がいつかくるかもしれませんね。タニノクリスチーはとうの昔に廃業となり今や新品の入手はかなり困難。廃業の際、代理店による叩き売りを逃れて、密かに主を待っていたアメ横のイタリヤーノも何年も前に閉店というわけでもはや幻の靴になりつつあります。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。