【特別寄稿】飛行機模型を愛して感じる幸せのカタチ。

 とても良い時代になったと思います。今まであまりなかったものがプラモデルになったり、構成に工夫を凝らしたものが次々と出現します。「こうだったらいいなあ」というものが出現するのは、夢の実現にほかなりませんからね。

 例えばファインモールドの1/72 F-4EJ。一気にこんなにたくさんのカラーリングが発売される幸せ。かつてオジロワシを一生懸命マスキングして塗装を試み、見事に敗れ去ったことなどが思い出されますが、それより遥かに再現の難度が高そうなデザインまでもが、メーカーの製品として発売される幸せ。細かいことを言えば、洋上迷彩のコーションマークが実物同様グレーで印刷されているという幸せ。

 そして、なんといっても合わせ目を処理する手間がほとんどない部品構成は組み立てを飛躍的に楽しくしてくれます。幸せだらけですね。

 パーツを見て「これならいくらでも作れるよ!」という気持ちになれるだけでも極上と言えます。こうなったら5機一気に組み上げようかな……という野望すら沸き起こります。しかも、欲しいところにすごく繊細な表現が入っているというおもてなし。プラモデルはこんなところまで来たのだなあという感慨を持たざるを得ません。

 HKモデルズのランカスターは1/32のキットをホビーショーで見たのがきっかけ。表面のリベットフルコースと、爆撃機ならではの銃座がよく見える感が堪らずものすごく欲しくなったものの、流石に1/32は大きすぎて置くところないなあと思っていました。しかし、わたしは希望を持っていたのです。それは同じくHKモデルズのB-17が1/48で出た時に、1/32のテイストがそのまま1/48に落とし込まれたような仕上がりだったので、「ランカスターも必ずそうなるであろう」という予想があったからです。

 発売が発表され、予約したものが届いた時に自分の予想が正しかったことを確認しました。箱を開けただけで幸せになれるキットというのは時として存在しますが、このキットはまさにそれです。エンジンは見えなくなっちゃうのにこの気合の入れよう。プラグコードはこれがないと点火しないのでモールドがないとちょっとがっかりしちゃう箇所ですが、バッチリ付いてます。見えなくなっちゃうのに。

 しかし私が予想外に驚愕したポイントがまだありました。今回ちょっと合いを確かめようと胴体に翼を合わせてみた時です。かなりがっちり付くようなジョイント構造に見えます。上下の翼を合わせて摘んで胴体のジョイントに差し込んでみたところ、前後にズレてます。あれ?入れ方間違えたかなと思って確かめますが、こうしか入りません。おやおや?と思って後ろに引っ張ってみたら……がっちり噛み合って接続されるではありませんか!

 でかいからネオジム磁石で取り外しできるようにしようかなあと考えていたことを先回りされたどころか、さらにその先に行かれたような感覚。ここを合わせるだけでこのキットの幸せの一割は感じられる気がします。大型キットに対する障壁を見事に粉砕されたような歓喜。えー、1/32もこの構造だったなら、1/32もいいなぁ……。

 さて、上記ふたつは作りやすさや技術の目指すところなどが幸せポイントでしたが、他の方向性にも幸せはあります。最近感じたのはモデルズビット社のベリエフBe-12。試作型と救難型です。試作型はエンジン部分が低くてかっこいいんですが、プロペラが波を叩いてしまったので、量産型はエンジンの位置が上がっています。こちらもこちらでかっこいいですね。

 モデルズビットは翼と胴体を別設計にしてまで両方のタイプを出してくれています。こんな機体がプラモデルで買えることがすでに幸せなんですが、私はこの荒々しい表面と、作りにくいことが予想される足周りのパーツ構成に幸せを感じているのです。「技術を超えた情熱」のようなものがこのキットからは香るようで、困難が待ち受けていようと「やってやるぞ!」という気にさせてくれます。抜群に作りやすいキットは最高ですが、こういう情熱が先走っているキットもまた幸せではないでしょうか。

藤島康介
藤島康介

『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神さまっ』『パラダイスレジデンス』などの漫画の他、サクラ大戦やテイルズオブシリーズというゲームの登場人物描いたりしています。『トップウGP』は月刊アフタヌーンで連載中!単行本は8巻まで発売中