
美しく磨かれた機体が青空に白線を引きながら飛んでいく姿。アメリカ空軍のアクロバットチーム「サンダーバーズ」。日常では見られない航空機のサーカスのような機動を見せるのがアクロバット飛行専門のチームの仕事です。日本でアクロバットチームといえばブルーインパルスですが、当然、海外にもチームはあります。日本でブルーインパルスが医療従事者への応援で飛行したそのころ、アメリカでも同じように医療従事者への応援で飛んでいるチームがありました。それが「サンダーバーズ」です。

海外のアクロバットチームとしてサンダーバーズは日本でも高い知名度を誇ります(断言)。4機が超接近して塊になって飛ぶ姿や2機の交差、ビシッと6機並んだところからのフォーメーション飛行など、戦闘機ならではの力強い飛行を楽しめるのがこのアメリカ空軍所属のサンダーバーズです。何度か日本でも展示飛行をしたことがあります。



なんといってもアメリカ軍のアクロバットチームは使用機材が実戦的なことが魅力です。F-16という、現役バリバリのマルチロールファイターが、パワーあふれる飛行と緻密な接近技を繰り出すその演技は、チーム結成以来の伝統です。タミヤのF-16は2007年に発売した精密なキットで、現在でも配備され続けている新しい姿をしっかり再現しています。2008年に、サンダーバーズ仕様としての発売になりました。2009年秋には日本での展示飛行もあり、ちょうどタイムリーな発売だったといえるでしょう。

このサンダーバーズのF-16、飛行した国の旗が機体に描かれるので、そのデカールもしっかり用意されています。日本の国旗もありますね。それにしても、たくさんの国を飛んだのもすごいですが、13mm程度のサイズでこれだけ判読できるデカールを用意したこともすごいですよね。

サンダーバーズは基本6機編成でアクロバット飛行をします。そのため標準的な1~6のマーキングがセットされています。5番が逆さまなのは、この機体が6番機とともに背中合わせで飛行する”カリプソ パス”という演目があり、地面に背中を向ける側の5番機のマークがそのときに揃うようにあしらわれているからです。実際の写真を見ると、まじでスレスレのすんごい飛行を見ることができます。


今回のサンダーバーズ仕様のF-16が面白いのは、この時ちょうど行われていた世代交代を織り込んだ部分があることです。サンダーバーズで使われていたF-16が老朽化し、後継機のちょっと新しいF-16に切り替えているタイミングでの製品化だったので、タミヤのキットもふたつのタイプに対応しています。サンダーバーズは、1983年から「F-16A」を使っていて、このキットは1992年から使用された2代目の「F-16C ブロック32」と2007年から配備された3代目の「F-16 ブロック52」を再現できるキットなんです。

そのあたりの形式の違いはパーツにも現れていますが、まずはこのサンダーバーズならではの装備をみていきましょう。まず大きな特徴はこのTのランナーです。サンダーバーズの「T」ですね。ここにはヘルメットなどが異なるパイロットの体と、スモークを発生させるパイプがパーツとして入っています。

このあたりが2代目と3代目の地味な違いです。何が違うかわからないと思いますが、タイヤの幅がちょっとだけ増えたのに対応して、脚庫のドアもすこしだけ大きくなったバージョンになっているんです。まあこんな細かすぎて伝わらない違いより、「主翼の端についているパイロンが大きくなっているのが新型の特徴」というほうが大きいですね。

コクピットを組み上げます。コンソールのボタンまでモールドがあって、けっこう塗装のがんばり甲斐がある部分です。全体の組み立てや基本形は通常のF-16となんら変わりません。なぜなら、このF-16は「有事のときには72時間で戦闘配備できるように」という条件が付けられているからです。そもそも元になったF-16も通常の戦闘機を転用しているので、調べるとサンダーバーズの衣装をまとう前のグレーの写真を見ることができます。このあたりが戦闘機をアクロバットチームとして運用する米国らしいやり方ですね。

キャノピーは色付きクリアーとクリアーの2種類が入っています。実際の機体にもフロント側のキャノピーにコーティングが施されていて、前は色付き、うしろは色なしの組み合わせが指示されます。中央にパーティングラインがありますが、これをキレイにする方法は……もう皆さん知っていますよね。

個人的にめっちゃ好きなのがF-16の脚です。航空機の脚のたたみ方はいろいろですが、シンプルにまっすぐ引き込むのではなく、アームが曲がりながら、タイヤを少し倒して引っ張り込む、という説明しづらい複雑な経過をたどります。ここ、F-16の個性ですよ!


タミヤの1/48スケールF-16系列の特徴として、垂直尾翼が差し込み式になっていることが挙げられます。これは完成後も箱に収められるようにという配慮です。

デカールは機体のアートワークをほぼすべて再現しています。ベントラルフィン(垂直尾翼の前の方の出っ張り)などは紺色に塗装する必要がありますが、翼端の3色ラインやお腹のサンダーバード模様などはこれだけでまかなえます。成型色も白なのでやろうと思えば部分塗装だけでもいけますね。


こちらのデカールはクルーやパイロットなどのメンバー名です。説明書にはメンバーが精鋭であることや、任期の話、そしてひそかに存在する複座型サンダーバーズ仕様機の話など、見逃せない情報が書かれています。

かっこいいF-16をさらに洗練させるサンダーバーズ仕様。武装やタンクがないので、よりF-16のコアな部分を楽しむことが出来ます。アメリカ空軍を代表するアクロバットチームの「サンダーバーズ」のことも詳しくなれる高精細で組みやすいタミヤの「F-16C ブロック32/52 サンダーバーズ」キットを、ぜひ体験してみてください!