俺はnippperで青天を衝く!! 「タミヤ サンダージェット」が俺の気力を再点火。

▲あの頃の自分はまだ生きている。目を背けるな!

 世界がクローズドしてすでに1年。僕の心の中にも自分の井戸の中で済ませていくしか無いのかと言う諦めと、どこか焦らなくて良いという安堵感ができてしまっていた。

 僕は安心というものが苦手で、逆境が好きだ。「やります!」といってトイレで頭を抱えている毎日の方が刺激があって良い。そんな性格もあり、コロナ禍というのは非常に自分を見つめ直す、すごいタイミングとなった。そしてnippperというwebの中での発信という歩みを強め、「今僕たち自身が模型をどう楽しんでいるのか?」そして「こんなマテリアルはやっぱすごいよ」とかをとにかく毎日発信してみようとチャレンジした。いろんなことを言われても僕は気にしないのでそこはよかった。しかし自分の体を「行ってみたいフィールド」へと移動させることがほぼ遮断された時、自分の夢や目標が一気に崩壊していく感覚を味わった。しかもこれからもっとやるぞ!と思っていたから。英語の勉強もやめてしまったし、世界史の本や地理の本も読むのをやめてしまった。正直、世界がこうならしょうがないという、おそらく多くの人が抱いている感情に僕ものまれてしまったのだ。

▲実物のあなたと出会った時の自分より、今ダサくなってないか

 模型だけでなく、本や服、家電をネットショッピングだけで購入しているとこんなに寂しいものなのかという実感をしたし、なんだかその買った物への愛着もちょっと薄い。模型は模型店だと今心底痛感している。検索して商品を探すのではなく、ずらっといろんな模型が混在した中をじっくりと、まるで博物館を歩くかのように見て模型を選ぶことができる。最高の時間がそこにはあるのだ。

 そして外出できた日にふらっと模型店に寄れたからこそ僕はこの「タミヤ 1/72 ウォーバードコレクション リパブリック F-84G サンダージェット」と出会った。そう、あのアメリカのデイトンにあるアメリカ空軍博物館で見た瞬間に「タミヤ!」って叫んでしまったあいつと。模型店で手にしたそのものズバリのサンダージェットは僕のつまらない感情を焼き払ってくれた。

 2019年にからぱたと共にアメリカのインディアナポリスへ行った。すでにもうこの時からnippperは始まっていたのかもしれない。インディアナポリスからアメリカ空軍の歴史が詰まったアメリカ空軍博物館へは長距離バスで約2時間30分くらい。最寄り?のバス停からタクシーでさらに30分くらいのとこにある。まぁ、なかなかにめんどいと言っても一生に何度あるかわからないかもしれないチャンス。バスを予約しレッツチャレンジ! 早朝のバスを取った。

 案の定バス停の雰囲気はヤバそうなアニキ達により、俺の心拍数を上げてくれた。これがアメリカの早朝か……と。そしてバスは時刻になってもこない。アメリカの西海岸からえっちらおっちらやってくる長距離バスに乗るのだから時間なんてバグって当然なのだ。心拍数を抑えるのに俺はアイスクリームの自販機と戯れることにした。海外の自販機はいつだって面白いのだ。

▲糖度の化身ともいえるラインナップしかない自販機。朝の糖分補給はコレに限る
▲すんごい雑なクーラーボックスにダイソンが合体したようなお化けが甘味を提供してくれる
▲俺の心拍数は平常値になる。はちゃめちゃな甘さが旅を後押ししてくれる
▲バスに乗ればアニキ達も俺たちのファミリー!マナーとか気にしたら負けです

 遠くから来ているバスだから、大きなトイレに入るようなもん。トイレの中で2時間半揺られ僕たちは憧れの地へ向かう。匂いなんてなんのそのってもんだ。

▲バス停を降りて「ヨシ!」するからぱた。ヨシおじさんの名付け親は伊達じゃない

 バスを降りて、タクシーで向かう。タクシーの運転手から「最近ハリケーンが来て、街が激ヤバだから道路からみてみろよ」と言われたので、外を見るとマジで、綺麗にハリケーンが通った跡が……アメリカってすご〜いっと小学1年生のような感想を抱きながら、「もうこれで博物館につく」という安堵感を得、僕の安堵感とは反する景色を眺めていた。そして僕たちは国立アメリカ空軍博物館に着き、ひとつ大人になったのだ。

▲無塗装銀は最高! と脊髄反射する美しさ

 この銀にド派手なマーキング。疲れた体には刺激が強すぎる眩しさ。この景色をタミヤのキット開発陣も僕らと同じような状態で、もしくはもっと大変な状況でみたのかもしれない。そして完成したプラモもこの姿に劣らない美しさを放つ模型。感情がキット開発を後押しさせたのか? それは考えすぎなのか……ただ手に取ると本当に綺麗だと思えるプラモが箱の中から出てくるのだ。

▲このキットはハッチを展開できる箇所がある。その内部パーツのモールドが凄まじい切れ味を持っている
▲刺身で食べたい!いや、銀で塗って銀塗装から浮かび上がるモールドを楽しみたい!いろんな感情を呼び起こさせてくれる胴体パーツ。1000円だし2個買ってもいいか!
▲1/72スケールという小サイズでも極上のコクピットを味わうことができる
▲主翼の裏もビッシリ!執念とも言えるお仕事
▲こんな綺麗なパーツに成型してもらい、さぞかし樹脂も喜んでいることでしょう
▲極め付けはこのマーキング。最高

 素晴らしいキットが、あの時見たそのものズバリであったことで、自分の心に火がついた。今の状況を理由にモヤモヤしていた気分をプラモが取り払ってくれた。そう、あの時の行動力と野心。その火が消えたらつまらない大人になっちまうぜ!

いつだって動けるように今を大切にどんどん勉強しよう。やっぱり自分の中になんでもいいから大好きなものは持つもんだと心底思う。そしてnippperで自分が体感したことをもっと発信して行き、さらに俺自身がもっともっとプラモを楽しんでいこう。いつだってプラモには心を動かす何かがある。

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フミテシ
@neofumiteshi

1983年生まれ。月刊ホビージャパンで12年間雑誌編集&広告営業として勤務。ホビージャパンで様々な世界とリンクする模型の楽しみ方にのめり込む。「ホビージャパンnext」、「ホビージャパンエクストラ」、「ミリタリーモデリングマニュアル」、「製作の教科書シリーズ」などを企画・編集。