女の子をカワイく塗るなら必読の大問題作。『月刊モデルグラフィックス』2021年2月号!

 時代が変わる瞬間みたいなものがプラモの世界にもあると思うんですけど、モデルグラフィックスの最新号はたぶん後世まで語り継がれるような転換点なんじゃないかな。女の子フィギュアが表紙になったとか、ピンク色でなんだか恥ずかしいとかそういう話ではなくて(そもそもモデルグラフィックスは表紙に女の子フィギュアを持ってくるのが一番多い模型誌でしたよね)、「美少女フィギュアの塗装」というものについて真正面から語った2020年唯一の本になっているのです。

 記憶に新しいところでは『月刊アーマーモデリング』2020年12月号でもフィギュア塗装は取り扱われましたが、あくまでミリタリーフィギュアに軸足を置きながらアニメライクな萌え表現については控えめな内容でした。モデルグラフィックスではキャラクターモデルの塗装法を真正面から捉えてブレイクダウンし、現在のトレンドを汲みながら最新のマテリアルを駆使した方法論をしっかり記述しています。

 パラパラとページを捲ると「女の子のプラモ/フィギュアが大量に載っているだけ……」に見えるかもしれないのですが、しっかり読み込んでいくと視界がガバっと開けます。いわゆるレジンキャストキットのシーンからPVC製の塗装済み完成品へとシフトしていった美少女フィギュアの世界、そしてアクションフィギュアやスタチュー(ポーズが固定されたもの)の表現をプラモデルが模倣するという時代の流れがズドンとクロスしたからこそ、この特集は成立しています。

 何が言いたいかと言うと、プラモやガレージキットの塗装の「お手本」として、PVC製の塗装済み完成品をしっかりと解読しようという試みが「うわ、現代じゃん!」という感じなのです。戦車や飛行機を塗る上でリファレンスとされるのは通常「実物」ですが(そこに模型的な取捨選択や味付けもあるし、あえて実物とは離れられるのも模型のいいところだとしても、あくまで実物がスタート地点にあることは間違いありません)、美少女プラモ/ガレージキットを塗りたい、美麗でカワイい完成品がほしい!と思ったとき、リファレンスとなるのは「巷で売られているようなゴージャスな完成品」。この特集は「あれに近づきたい/あれを乗り越えたい!」というリビドーを明示している……というのが(あたりまえのようですが)衝撃的。

 PVC製塗装済み完成品フィギュアのあまりにもスピード感のある潮流のなかで、大量生産品でありながら「萌え」の記号をふんだんに取り入れ、細密な塗装を効率的に施すかノウハウというのはプラモの世界でなかなか語られることがありませんでした。フィギュアの根幹である造形と双璧をなす塗装(もちろんその塗装見本を作る彩色師という職業があるわけです)について技法とコードを分類し、解読し、プラモユーザーが運用すべきかという記事構成はとてもエキサイティングです。正直、「読めば誰でもできるのか?」と言われればそんなに容易い内容ではありませんが、少なくとも綺羅星のようなフィギュアの数々がどうやって塗られているのか、ということを知る上でこの号はある種の永久保存版と言って良いでしょう。

 「ないものを作る」という少量生産のレジンキットが持っていた役割は徐々にその存在感を小さくし、今はとにかくあらゆるものが製品になり、完成品フィギュア的な製造技術がプラモにも輸入され始めたことによって「自分で作ること」と「出来合いのものを買ってくる」ことの垣根もクオリティの面では曖昧になりつつあります。それでも自分で作らなければ気がすまないのがモデラーの性。だからこそ、この特集は完成品フィギュアの圧倒的なクオリティの秘密を解き明かし、それを自分の手でシミュレートし、さらには各々の表現としていくヒントとしてあまりにも有用な一冊となっています。

 読めば読むほど打ちひしがれるか、読めば読むほど闘志が湧くか。プラモが模倣しているのはキャラクターなのか、それとも完成品フィギュアなのか。今号は大変な問題作です。これを読まずにフィギュア塗装を語ることはできませんよ!みなさんも、ぜひ。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。