MODEROID クルーズチェイサー・ブラスティー/プラモデルが語るパソコンの進化

 ブラスティーのプラモデルが出た。買った。大事件である。
 目の前に現物があり、今まさに写真を撮っているにもかかわらず、全く現実感がない。これはいったいどんな奇跡だというのだろうか。神の存在すら信じてしまいそうな勢いである。

 読者の皆さんの多くは、「そんな大げさなもん?」と首を傾げていることだろう。しかし、私のようにプラモデルやゲーム、アニメ好きをこじらせた年配者にとっては、まったく大げさではないのだ。

 「クルーズチェイサー・ブラスティー」は1986年に発売されたパソコン用のRPGである。その頃のゲーム機はファミコンが全盛。ガンプラなら、「機動戦士ガンダムZZ」の旧キットシリーズが続々とリリースされていた頃だ。

 当時、パソコンは今のように普及していなかった上に、プラットフォームが乱立していた。簡単に言うと、WindowsのようなOSがメーカーごと、パソコンの機種ごとに違っていた。だから、たとえパソコンを持っていても、ゲームがその機種に対応していなければ遊べなかった。

 ブラスティーは三機種のパソコンで発売された。ヒット作といわれているが、当時のパソコンのシリーズ数や普及率から考えても、遊んだことがある人は極少数だ。このゲーム、のちに家庭用ゲーム機に移植されることはなかった。そしてWindowsでリニューアル版が出ることもなかった。ゆえに存在を知っている人もいまでは決して多くない。ニッチもニッチなゲームなのである。

 にもかかわらず、今になって、主人公機のプラモデルが全国の模型店の店頭に並んだ。その奇跡のキットがこれだ。

 ボックスアートを見るたびに、思わず涙があふれてしまう。これはブラスティーのメインビジュアルであり、PCソフトのみパッケージイラストなのだ。ボックスアートの画質が微妙に荒いのは、当時のパッケージイラストをそのまま復刻したためである。

 キットにはフルカラーの豪華な組立説明書に加え、ゲームに同梱されていた設定資料集が付属する。これだけで価格分の価値がある!さらにチラシも入っていた。なんとプロジェクトEGG(レトロパソコンのゲームをWindowsで遊べるサービス)でブラスティーが遊べるらしい!

 もはや箱を開けただけでドキドキが止まらないというのに、組んだりしたらどうなってしまうのか。卒倒してしまうかもしれない。暴走気味の心を落ち着けるため、私はパソコンの進化に思いを馳せながら、組むことにした。

 1986年当時、ブラスティーをプレイするには、何万円もするデスクトップ型パソコンを買わなくてはならなかった。今、この記事を書いているスマートフォンは、そのパソコンの何万倍もの性能を有し、私の手にすっぽりと収まっている。30年超で凄まじい進化だ。

 パソコンの進化は模型の進化も促した。今やコンピューター上で設計された模型が、3Dプリンターでプリントアウトされる時代である。このブラスティーのプラモデルも、パソコン上で設計されたものだ。パソコンの進化なくして、このキットが作られることはなかった。本キットを組むことは「パソコンの進化を指で体感する」作業なのかも知れない。

 そんなことを考えているうちに組み上がった。頭の中で思い描いていた人型メカがそこに現れた。人型でありながら、メカであることを強く感じさせるデザインがとてもカッコいい。大満足である。

 本記事を書くにあたり、本キットの開発者・田中宏明氏へのインタビュー記事を読み返した。「時代が求めたんじゃなくて、僕がやりたかったんですよ」という言葉は、完全にガレージキットの思想である。

 しかし、その思想をマスプロダクトに持ち込むことで、こうして私の手元にも超カッコいいブラスティーがやってきたのだから、感謝しかない。圧倒的感謝……!!

 本キットは、パソコンの進化が生み出した奇跡の珍品、と言えよう。気になった人も、知らなかった人も、この奇跡の一品をぜひとも手にとっていただきたい。

トミすけ
トミすけ

アラフィフ紳士。本業は会社員の週末モデラー。キャラクターモデルを中心に、気に入ったプラモデルを買ってきてはマイペースで作っています。早く作れるようになりたくて、日々精進中。