
モデルアート別冊『艦船模型スペシャル』2020年秋号を君はもう読んだか。読んでない?読もう。いま私は赤城と加賀をパチ組みして並べたくてウズウズしている。だってもう、作らないと無理でしょコレはもう。
日本の空母といえば赤城と加賀。オレは加賀のほうがムスッとしてて好きです。海底に眠る彼女たちを去年ポール・アレン財団が発見しましたが、プラモならいつだって机の上でキャウフすることができますね。
作例……というより、あまりにもレベルが高いので見て「ホエ〜」としか言いようがない作品はハセガワ1/350と1/700、フジミの1/700で勢揃い。海自の「かが」やフルスクラッチの1/350天城など「このタイトルならそこまでやらないとね!」と思えるガチガチの鉄板ラインナップで構成された誌面はボリュームたっぷり。


こういう超絶〜な作例を見ると「オレ、こんなのできないし!」となりそうなもんですが、全然そんなことない。ものすごい解像度で「赤城と加賀ってこうなってたんですよ」と教えてもらうと、フネの模型作るときに「なるほど、人がこれくらいの大きさで、周囲の装備品はこんな感じのサイズか!」と理解できている自分に嬉しくなるのです。脳内で再現できているか、まったく知らずに作っているかでは同じ模型でも全然楽しみレベルが違いますからね。

さて、今回のハイライトは10ページにも及ぶ鷲見 博氏による赤城艦橋の徹底検証記事。鷲見 博氏はプラモめっちゃ食べてる人なら知ってると思いますが、バンダイスピリッツのミレニアム・ファルコンとかスター・デストロイヤーの考証を担当したSWプロップ研究家であり、写真や映像をはじめとした膨大な資料からリバースエンジニアリングで「ホントはこうなっていた!」というのを追い求めるすごい人。
今回は「赤城の艦橋」(模型的には甲板の隅にちょこっとある建造物ですが、冷静に考えると4階建てのビルで、バルコニーとか屋上に死ぬほどいっぱい装備がくっついている)をあらゆる角度の写真や映像、各種図面と突き合せて整合性をキープしながらCADでモデリングするという超大変(そして読んでいる方は超楽しい)な作業に当たられています。

その思考の過程は「ここではこうなっているからこう!」みたいな独断ではなく、あくまでも客観性をキープしながら観察し、それぞれの構造の意味や関連性を読み解きながら勧めていく探偵小説のような筆致で詳細に描かれており、読んでいると「うわ〜〜〜確かにそうだわ〜〜〜!!」と、赤城の艦橋に1mmも興味なかった人間でもエキサイティングになってしまうほど。
写真にちらっと写っている乗組員のポーズから、写真には写っていない(けどそこに確実にあったであろう)ディテールを推測していくくだりなどは「鋼鉄の兵器!」というよりも人々の息遣いのようなものを感じて、これが小さな縮尺の艦船模型にも(見えないけど)エッセンスとして含まれているんだよなぁと思えるようになるとプラモの見え方がズドーンと変わってくるかと思います。
とにかくこの記事おもしろいから読もう(マジで)。

個人的には渡辺真郎氏による「神戸港中突堤旅客ターミナル」のジオラマが最高にホームラン。ふたつの客船に挟まれた突堤に建つ神戸メリケンパークオリエンタルホテルを配した構成は写真映えも素晴らしく、やっぱり模型の「後ろ」より「前」になにかがある景色って良いなぁ(C重油さんみたいなね)と思いました。
艦船模型スペシャル最新号、艦船模型に興味を持ってみたいなぁ(いまんところそんなにないけど……)という人でも、ここまで濃い情報なら10回くらい読んでると「まずは作るか……」となるはずなので、ぜひとも読んでください。ひさびさに艦船パワーが充填されたぜ!じゃあね。