飛行機とかロボットとか、空を飛ぶもののプラモを飾るのって難しい。飛行機の車輪が出ていれば「地上にいますよ」という記号になるし、ロボットが大地を踏みしめていると「ううむ、あのビュンビュン飛び回っていた姿はどこへ……」となることがあります。
そういうときにのためにプラモメーカー各社から「ディスプレイスタンド」というのが売られているのですが、だいたい空を飛んでいるものが棒で支えられているという模型的なウソが発生しますので、「せめて台座は目立たないようにしよう」ということで、慎ましい透明とかグレーとか白といった無彩色のものがほとんどです(例えばジオン軍、連邦軍のマークなど、ディスプレイスタンドまでが一体化して主張するように設計されたものもあるにはありますが、飾るものが最初から想定されているからこそ、こういう商品が企画できるんですよね)。
で、今回紹介するのがBANDAI SPIRITSのカスタマイズシーンベース(情景Ver.)というもの。私はこれを見て「台座が模型としてめちゃくちゃ主張してくる」という逆転の発想にけっこう衝撃を受けました。



で、このビルの縮尺はどうなってんだと思うじゃないですか。どう見たって数千分の1とかのサイズなんですよ。ここにガンダム置いたらイデオンサイズになってしまう。しかし待ってほしい。これは「空を飛んだ状態でディスプレイするためもの」なので、これは見立てとしての「空撮的な表現」なんですよね。


ぶっちゃけ、1/144と書かれていても地面のディテールというのは遠くなれば小さくなるし、近くなればこまかいところもよく見える。宙に浮かすための棒の長さは決まっているので、棒の長さを144倍にして「じゃあこれは上空何メートルなのか」とか計測しても意味がないことになります。
つまり、これはもう受け手の想像力。「浮いているんだ」という心の目で見て、高さとか縮尺とかそういうことを全部置いといて、ビジュアル的にグッと来れば勝ちなんですよ。すごいな。これは「飛行」の模型だ。飛ぶという概念、宙に浮いているという”概念”をプラモにしているということですよ。
じゃあマジで飛んでる飛行機、これを上に刺したらどうなるのか見てみようじゃないか。絶対に笑っちゃうような見た目になるってば……。

これはまいった。実際見ると、「こんな低いところを巨大な飛行機が飛んでいるわけないじゃないか……」とか野暮なこと全然思わない。「ああ、空を飛んでいるな!」という謎の納得感が襲ってきます。どこの街だかわからんけど、ブルーインパルスが飛んでいて、それをチェイスするグレーのT-4が下からも見えているのだろうな、という気持ちになります。


長州力もびっくりの都市型ベース。土台という「主張したらアカン」みたいな商品にここまでガッツリとかっこいい彫刻がされていて、それがけっこうエモーショナルな効果を生むというのはとても意外で、新鮮な体験です。

ということで、「情景Ver.」ってどういう商品名なんだ!と思っていたカスタマイズシーンベースの新作がめちゃめちゃ楽しい、という話でした。定価税込440円でこんなにイマジネーションが大爆発する土台、あんまり他にありませんので、買ってきて手持ちのプラモを片っ端から飛ばしてください。
みなさんも、ぜひ。