
これは超傑作です。先に言っておくと、私は団員ではありません。それでもPLAMATEA(読みは「プラマテア」だぜ)で白銀ノエルがプラモデルになると発表されたときから、これはちょっとタダゴトじゃないぞと思って発売を待っておりました。白銀ノエルというキャラクターをよく知らなくても、見るからに「プラモデルにしたらおもしろそう(あと見た目が超タイプ)」だったからです。
まず色がいい。紺色の甲冑にゴールドの縁取り、革を思わせる茶色のベルト、そこから覗く白い衣装。そして髪は淡いブルーグレー。Vtuber、とりわけホロライブのキャラクターというと画面の中で映えるゴージャスで賑やかなデザインを想像しますが、白銀ノエルはそのままファンタジー系RPGに出てきてもおかしくないくらいシックです。ランナーを眺めていても色の圧が強すぎず、組んでいるあいだにもゆったりとした時間が流れます。

パーツを袋から取り出していくと、このプラモデルが「全部をプラスチックの色分けだけで解決する」という方向には走っていないことがわかります。顔はfigmaをはじめとする可動フィギュアで培われてきた造形を思わせるめっちゃかわいい彩色済みパーツ。表情豊かな手首は10種類も用意され、前垂れには柔らかな素材が使われています。細かな色分けの一部はメーカー側で塗装済み。逆に、小さくてスナップフィットでは無理をしそうなところには素直に接着剤を使わせるという決断をしています。
硬いプラスチックにするところ、柔らかい素材に任せるところ、工場で色を付けておくところ、そして作る人間の手に委ねるところ……。こうした境界線がかなり意識的に引かれています。「接着剤不要」や「完全色分け」といったわかりやすいキャッチフレーズに溺れることなく、最終的にめちゃくちゃかわいい白銀ノエルがきれいに立っていてほしいという地に足の付いたジャッジメント。その塩梅が心地よいのです。いやマジで。

箱の中には大判の水転写デカールも入っています。金色の細いトリミングをはじめ、最初に台紙を見たときは「えっ、これ全部貼わないと完成しない感じですか?」と少々怯みました。しかしデカールには触れず、そのまま組み上げた状態の写真を友人に送ったところ、返ってきた第一声が「これパチ組み!?」でした。そうなんです。ただ組んだだけでも、すでにかなり白銀ノエルなのです。
もちろんデカールを貼ればさらに情報量は増えます。しかし大量のデカールが「ここまでやらなければ未完成です」という宿題にはなっていないのがすげえ。むしろ完成した姿を見ながら、「もうちょっと金色を足したいな」「ここはマーカーで塗ったら楽しそうだな」と思ったときの水先案内人に見えてきます。どこまでを最低限の完成と呼び、どこからを遊びとして残すかというゲームバランスの設定がうますぎる。

そして実際に組んでみると、そもそも白銀ノエルというキャラクターのデザイン自体が、驚くほどプラモデルというプロダクトに向いていることに気付きます。微妙な曲面を使って表現しなければいけない(=硬質なプラスチックの成形品では非常に繊細な設計を必要とする)肌の露出は比較的少なく、腕や脚には甲冑を装備しています。柔らかな人体のラインと、硬い鎧の輪郭がコントラストをなし、ともすればアウトラインを破綻させがちな関節も、衣装とアーマーの境界へ自然に逃がせるところが多く、実際に腕や脚を動かしてもシルエットが崩れにくいのです。
可動フィギュアは、関節を増やせばそれで偉いというものではありません。人体として自然に見える場所で曲がり、動かした結果としてキャラクターの姿が破綻しないことが肝要です。その点でこのノエルは、figmaをはじめ長年さまざまなキャラクターを「動かせる立体」にしてきたマックスファクトリーの経験が、そのままプラモデルの設計へ流れ込んでいるように感じます。

なかでも感動したのが腹部です。身体を動かすための構造を仕込みながら、そのために必要なパーツ分割が衣装の色分けと同じところを走っている。可動のための都合がキャラクター造形としての衣装のラインとピタリ一致しているという奇跡的な光景。しかもそれぞれの軸の位置がパーフェクトに設定されているため、最低限のパーツでその調和が成立していることにちょっと涙が出そうになります。大げさじゃなくて。
ここまで来ると思わず言いたくなります。「おまえ、プラモデルになるために生まれてきたんか」と。

組み立て自体も過剰に長くありません。部分的に左右非対称なデザインがほどよく工程に変化をもたらしてくれるのもあるのですが、説明書をよく見ながら左右の手足のパーツをまとめて切り出し、並行して組んでいけば、組む前の見た目から想像するよりもだいぶスムーズにゴールへと到達できます。
そして不思議なことに、これだけ完成度が高いのに「もう何もしなくていい」とは思いません。むしろ金色の細部をマーカーで補ってみたい、あるいは細筆でペローっと塗ってみたい。塗るのが難しそうなところはデカールを貼ってもう少し情報を増やしたい……。プラスチックパーツだけでも充分なところまで連れてきてくれるのに、作る人間が手を出す余白がかなり気持ちよく残っているのが「好(ハオ)」なのでございます。

そして完成した白銀ノエルを机の上に置くと、「これ本当にプラモデルなんすか」と少し不思議な気分になります。輪郭は流麗で、顔は生き生きとしていて、甲冑と身体の境界にも不自然なところはない。それでいて塗装済み完成品を買ったときとはまるで違い、どのパーツがどう噛み合い、どこに関節が入り、どこが接着されているのかという自らの記憶がちゃんとそこに刻まれています。なぜオレたちは……美少女を……プラモデルで組むのか。

これまでいろいろな美少女キャラクターのプラモデルを組んできましたが、PLAMATEA 白銀ノエルはそのなかでも最高傑作だと思います。それは色分けがいちばん細かいからでも、パーツ数がいちばん多いからでも、いちばんよく動くからでもありません。完成品フィギュアならメーカーが”完成”まで請け負うところを、プラモデルという媒体では体験として設計し直す必要があります。プラスチックパーツでできることの限界と折り合いを付けながら、ユーザーにどれくらいの「仕事」を手渡すのか。その塩梅が、白銀ノエルというキャラクターの色、衣装、身体、甲冑、そして可動のすべてとものすごくきれいに噛み合っているからです。
団員じゃなかった私ですら、ファインダーを覗きながら「これはものすごいものを作ってしまったぞ」としばし放心してしまいました。キャラクターを好きだからプラモデルを買ってもいいのですが、そうじゃなくても絶対に買ったほうがいいぜ、と言いたいプラモデルがここにあります。みなさんも、ぜひ!