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【レビュー】一つのパーツに込められた、BANDAI SPIRITSの技術とアイディア。HG「VF-31J ジークフリード」が魅せる、美しき差し替え三段変形の境地。


 ふと耳にした「『マクロスΔ』が放送開始から10周年を迎えた」というニュースに、あのハヤテやワルキューレたちの激闘からもうそれだけの月日が流れたのかという感慨に浸ると同時に、今なお色褪せないジークフリードの魅力に改めて気づかされます。

 そんなメモリアルな今だからこそ、手にとってほしい傑作があります。バンダイスピリッツが送り出した「HG 1/100 VF-31J ジークフリード」です。かつての可変戦闘機のプラモデルといえば、「あの複雑な三段変形をどう再現しているのか」「塗装の塗り分けはどうなるのか」という不安とワクワクが入り混じった、少し身構えるような気持ちになったものでした。しかし、この最新キットはそんなモデラーの先入観を圧倒的な技術力で打ち砕いてくれました。そこには、現代のプラモデルだからこそ到達できた「組み立てる楽しさ」と「圧倒的な美しさ」の新しい答えが詰まっています。

 本キットを手に入れ、箱を開けたモデラーが最初に息をのむのは、間違いなく翼や機体各所のパーツを目にした瞬間でしょう。

 一枚のランナーの中で複数の色のプラスチックを成型する多色成型技術において、バンダイが世界一であることはもはや誰もが認めるところです。そして、このキットにおいてもその技術やアイディアが駆使されています。それがこのパーツ。薄い航空機の装甲パーツに、極細の青と白のラインが寸分の狂いもなく、インサート成型によって「ひとつのパーツ」として収まっているのです。

 本来であれば、非常に細かく、位置合わせも難しいマスキング塗装を何度も繰り返さなければ手に入らないはずの「あの美しいライン」。それが、ニッパーで切り出すだけで、最初から完璧な色分けとシャープさで手元に現れます。塗装派はもちろん、普段は色を塗らずに素組みで楽しむモデラーにとっても、この青と白のラインが一体化されたパーツを眺めるだけで「このキットを買って本当に良かった」と満足できることでしょう。

 マクロスの可変戦闘機プラモデルといえば、複雑な関節ギミックによる完全変形が花形とされがちです。しかし、1/100というデスクトップサイズのスケールにおいて、バンダイはあえて「完全変形という選択肢」を排しました。


 その代わりに採用されたのが、各形態のベストプロポーションを追求した「差替三段変形(ショートカットチェンジ)」です。完全変形を追求すると、どうしても各形態のどこかに歪みやしわ寄せがいき、強度の不安やプロポーションの妥協が生まれてしまいます。しかし、このHGジークフリードは、ファイター(戦闘機)、ガウォーク(中間形態)、バトロイド(人型)のそれぞれが、まるで単体の固定モデルであるかのように「ベストなプロポーション」になるよう設計されています。


 ファイター時の航空機としての薄いシルエット。ガウォーク時の絶妙なハの字の足の開き。そしてバトロイド時のマッシブな立ち姿。パーツを組み替えるという一手間を挟むだけで、ストレスもなく、強度に怯えることもなく、三つの「最高に格好いい姿」を卓上で手に入れることができるのです。

 付属の極薄ネーマーシールは、複雑な塗り分けが必要な箇所も見事にカバー。ここからさらに筆を重ねるのも楽しい時間ですが、ただ丁寧に組み、シールを貼るだけでも、1/100のなかに驚くほどの解像度と実在感が宿ります。

 机の上に贅沢なランナーを広げ、青と白の美しいラインに惚れ込みながら、三つの姿を行き来する。眺める、組む、変形を楽しむということがストレス無くそれぞれ楽しめるという意味でも、心の中でプラモの楽しみ方を「ショートカットチェンジ」できるプラモデルです。バンダイの技術とアイディアの結晶を手のひらでぜひ堪能してください。

SSC

1979年生まれ。サラリーマンの傍ら、模型誌でキャラクターモデルの作例も製作している。模型サークル「PLASTICBOMB」のメンバー

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