
プラッツの1/144グレイシルフは、2層のレイヤーを重ねて完成させるプラモデルだ。1層目はパネルラインの凹モールド。2層目は、そのパネルラインを拒否するかのようなラインが描かれたデカール。軟化剤を使ってデカールをピタリと貼り付けると、凹モールドがデカール越しにうっすら見える。まるで透過レイヤーだ。立体に刻まれた凹モールドと、平面に印刷されたデカール。お互いを無視したラインが交錯し、チグハグで複雑怪奇な模様が現れる。肉眼で模様を追ってみると、視線はどこにも落ち着かない。まるでカメラのオートフォーカスが迷うような感覚だった。
本キットの内容は、プラッツ1/144『スーパーシルフ雪風』をベースに、デカールをグレイシルフ専用に変更し、ジャムのペーパークラフト(激ムズ)を追加したもの。説明書は、スーパーシルフ版に「設定では定かではありません」という注釈を何箇所も追記したもので、ちょっと面白い。

面を切り分ける凹モールドは、プラモデルを機械らしくする強い記号だ。そして山下いくとらしいデザインの、不思議と未来を感じさせるパネルラインは造形もシャープで見応え十分。線は多いはずなのに、煩くないのは何故だろうと観察する時間が楽しい。

本キットは接着剤によって組み立てるタイプ。エアインテークまわりの組立は架空機らしく予想もつかないエキサイティングなパーツ構成をみせてくれる。ただ、場所によっては接着面の隙間が、緻密な凹モールドより目立ってしまう箇所が散見される。スケールが小さいぶん、組み立て精度や製品精度がそのまま仕上がりに表れやすいのかもしれない。

しかし、そんなことさえどうでもよくなるほどスタイルは抜群だ。惚れ惚れする。

今回はキャノピーとエンジンノズルのみ塗装し、機体は無塗装のままスミ入れ(これは余計だったかもしれない)、その上にデカール、つや消しスプレーで完成。しかし尾翼を先に接着してしまうと、主翼の大判デカール貼りが困難なことが後から発覚。よく見ると無理やり貼ったところが失敗しているが、雰囲気は損なっていないので良しとした。

スプリッター迷彩のようで、何かが違う。鍛え上げられた機械の肉体に、異郷のトライバルタトゥーを刻んだような戦闘機だ。ということが作って初めてわかる。アニメでは見逃していたディテールを、組み立てながら、筆で、指で、目線でなぞる。デザインを感じ取る資料として、大変に優れたキットだった。