
完成したらリビングの特等席に置きたいプラモデル。そんなキットがどれだけあるだろう。多くの模型は、完成した瞬間にどこか遠くから切り取られた迫力を備え、日常の風景とは少し違う空気感をまといがちだ。しかし、ハセガワが展開する「メカトロウィーゴ」は違う模型というフォーマットを借りて僕らの手元に届けられた、「所有できるアート」そのものだと言える。

スクラッチビルド(一点物の手作り作品)の熱量をそのままインジェクションキットに封じ込め、世界中に解放した偉大な先達といえば横山宏と、その伝説的タイトル『マシーネンクリーガー』だ。この「作家の造形を、ユーザーがプラモデルという媒体で享受する」という革命的な文脈を、21世紀の空気感で鮮やかに継承したのが小林和史によるメカトロ世界だ。マシーネンが戦場の硝煙と油の匂いを運んできたのだとしたら、ウィーゴが運んできたのは「モダンデザインの洗練」と「プロダクトとしての優しさ」である。

ウィーゴの丸みを帯びたフォルムは、どこか懐かしい昭和の家電や、街角で見かける愛らしい軽自動車を彷彿とさせる。兵器としての刺々しさは微塵もなく、そこにあるのは「生活に溶け込む道具」としての存在感だ。メカトロ世界の設定やストーリーがなくても見るものに強い印象を残すデザインは、最初の作品「チューブ1号」が生まれてから20年経ったいまも性別や年齢を問わず広くファンに受け入れられている。

メカトロウィーゴのプラモデルを買うということは、ただ模型を買うことにとどまらず、「小林和史の作品」を、あなたの部屋にパーソナル・コレクションとして迎えるということでもある。モチーフの再現をした色分け済みのプラモデルをただ組んでその姿に見惚れるのも良いが、ユーザーによって改造や塗装を施され、これまでたくさんの「マイ・ウィーゴ」を受け手の数だけ作り出してきたことも非常に重要なポイントだ。どんな色で塗ってもそれを受け止め揺るがないデザインは、おそらくこれからも長く愛され続けるだろう。

ハセガワの1/20メカトロウィーゴは、かつてガレージキットいう形態でしか手に入らなかった「熱烈なファン向けの複製品」から、誰もが手に入れられるプラスチックモデルとしてこの造形と色彩を民主化したものだ。発売から10年が経過しているが、正直言ってフォルムの再現性とギミックには目を見張るものがある。ここ最近では1/35スケールや1/20スケールでさまざまなコンテンツとのコラボ商品が連発されていたが、オリジナルデザインに最も近いと言える「素のウィーゴ」を掴み心地のよいボリュームで味わえるこの製品は特別なひとつ。

太ももや肩などは合わせ目が目立つので接着や合わせめ消しにトライすると一気に見栄えが良くなる、というのも私の好きなポイントだ。こまかなパーツもあるし組み立ての順番を注意深く追わないとカタチにならないちょっとした気難しさもあり、可愛い見た目とは裏腹になかなかの組みごたえなのも、このキットを何度も作りたくなる美点になっている。これらの要素が高次元でバランスした、ハセガワのキャラクターモデルのなかでもトップクラスの傑作キットだと思う。

数万円の絵画を買うのは勇気がいるが、数千円で「アートピース」が手に入るという事実は、プラモデルをつくる人与えられた最大の特権だ。箱を開け、パーツをパチンと合わせる。たったそれだけの工程で、殺風景だったあなたのデスクに懐かしくも新しい不思議な光景が広がる。塗装を凝らしてもいいし、プラスチックの色のまま、お気に入りの雑貨と並べて飾ったっていい。目を三角にして模型を作り上げるというよりも、「日常を彩るアートを、自分の手で完成させる」という楽しみ。日曜の昼下がり、あるいは、仕事終わりのリラックスタイムに。あなたの部屋にウィーゴを迎えてほしい。世界に新たな傑作がひとつ増える日を、彼らは箱の中で待っている。