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誰かの作りかけには物語がある。模型雑誌が開かせた誰かと僕の「1/144 トゥランファム」/凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル

 先日、ホビージャパンMOOK『凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル』に掲載されている、横山宏氏のコラム「横山宏氏筆塗りスタイル」を読んだ。その中にある「私の知らない誰かの作りかけを引き継いだP-40N」という一節が強く印象に残り、思わず我が家にある「1/144 トゥランファム」の箱を開けてしまった。

 横山氏のP-40Nと、我が家に眠っていたトゥランファム。まったく異なる模型ではあるが、「途中で止まっている模型を、別の誰かが受け継ぐ」という不思議な共通点に、強く心を動かされたのだ。

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 80年代に夢中になって作ったプラモデルを、もう一度手に取ってみたい。そんな思いを持つ僕のようなモデラーにとって、ネットオークションなどで旧キットを探す時間もまた、模型ライフの楽しみのひとつになっている。しかし、ようやく手に入れたキットはすでに貴重な存在。いざ手元に届くと、その希少性ゆえになかなか手を付けられず、箱を開けてはそっと戻す……そんな経験がある人も多いのではないだろうか。

 僕が数年前に購入したバンダイの1/144トゥランファムは、いわゆる“ジャンク扱い”の商品だった。ジャンク品とは、欠品や破損など何らかの理由がある、いわば「訳あり」のキットのこと。実際に届いた箱を開けてみると、背面の飛行ユニットが欠けており、いくつかのパーツはすでに組み立てられている状態だった。

 がっかりしたかといえば、そうでもなかった。ただ、どう向き合えばいいのか分からないまま、しばらく棚に積まれたままになっていた。完成させるでもなく、かといって手放すでもなく、どこか宙に浮いたような存在だったのである。

 そんな気持ちに変化が生まれたのが、冒頭でも触れたホビージャパンMOOK『凄腕モデラーのプラモ筆塗りスタイル』に掲載されたコラムだった。マシーネンクリーガーの生みの親でもある横山宏氏が、誰かの手によって途中まで作られたジャンクキットを手に入れ、それを“今の自分”が完成させることの面白さについて語っていたのだ。このコラムに刺激されて、棚に積んでいた「1/144 トゥランファム」のキットに手が伸びたのである。

 改めてキットをよく見ると、頭部は組み立てられ、合わせ目にヤスリがかけられ、青で筆塗りが施されていた。

 もう一つ、上腕も組み立てられていて、綺麗にヤスリがかけられていた。合わせ目を消しながらていねいに組んでいこうという前のオーナーの意思が感じられる。本体に欠品はなさそうだ。

 コラムの影響か、前の所有者からバトンを受け取った気がして、他のパーツにニッパーを入れて、発売されてから何年ぶりなのかわからない1/144トゥランファムの製作が始動した。このキットを途中まで作っていた前の所有者は80年代リアルロボットに夢中になった僕と同世代かもしれない。

 あの頃を思い出すと、1/144トゥランファムが発売されたのは、多くいたプラモ友達がどんどんプラモへの興味を失っていった時期だ。ひょっとすると前の所有者も寂しい思いをして製作していたのかもしれない。

 合わせてこの頭部のパーツは合わせ目の処理が非常に難しく苦労の跡が見られるから、なかなかイメージ通りにできなくって手が止まっちゃったのかもしれない。

 そんなことを想像しながら作る時間は、1人で作ってるにも関わらず僕の知らない誰かと一緒に作ってるような、誰かのこだわりを共有するような……今まで体感したことのないプラモデル体験になった。

 僕の知らない誰かがやりたかったことを引き継いで、時代を超えてストーリーは繋がっていく。そんな商品はなかなかない。プラモデルって本当にすごいね。

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mat

1969年生まれ。模型ライフを綴ったブログmat modeling service運営 。製作から撮影まで、模型誌には載っていない80を超える独自How toを配信中。ホビージャパン誌 第22回オラザク選手権大賞ホルダー。

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