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【レビュー】成功体験が誘う、複葉機プラモへの道。/Azur 1:72 SPAD 510 ‘At War’

 前の日に履いた靴の影響で、その日の試着感は変わってくる。スニーカーなのか革靴なのか、それぞれが緩めなのかキツめなのか……とか。

 かつて親しくしていた靴メーカーの人物にそう言われたことがある。サイズ感に大差ない靴を揃えているつもりでも、メーカーやモデルごとに形状の設計思想は異なり、完全に同じとはいかない。さらに靴底がゴムなのか革なのか、あるいはハイテク素材なのかといった要素が重なれば、履き心地は一様ではなくなる。その日その日で足の感覚が変容するというのは、言われてみれば確かに一理ある話だった。

 靴の履き心地が「過去が現在に影響を及ぼす」例だとしたら、ハセガワのファントムを無事に塗り終えたときの心地は、現在から未来へ与える影響そのものだった。納得のいく密度の高い製作ができたという充足感や、しっかりと塗り切ったという手応え。これまでのなかでもかなりの出来栄えになった。充実感は指先に残り、それを確かなものとする完成品が棚にある。感覚と事実を行き来する心地良さは、次もまた飛行機を作りたいという欲求につながるものだ。

 そんななか、不意に頭をよぎったのは、ファントムを手掛ける前には露ほども思わなかった複葉機という選択だった。もっとも、いざ作ろうと思い立っても右も左も分からないのが実情だ。どのような機体が存在するかは何とかなるにしても、どこのメーカーがキットを出し、その精度がどうなのかといった全容を把握するのは容易ではない。だが、あのレトロな佇まいには抗いがたい魅力がある。

 手に入れたAzur(アズール)の「1/72 SPAD 510 ‘At War’」は純粋に見た目の印象だけで選んだ。作ってみると全体的に嵌め合いがきついところはあるが、穴を広げたりと調整すればなんとかなった。パカッと真っ二つに割れたボディパーツは一見合わないのだが、プラスチックのしなりを利用して、上をしっかり接着してから、下は手でグッと抑えながら貼り付けるとしっかり合う。

 今は、機体の重さに負けて広がってしまう脚部をデザインナイフの替え刃ケースで支えながら接着している。こうした工夫で乗り越えようとする姿勢の源泉は前日の靴のように私を複葉機まで導いたファントムの成功体験にある。

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クリスチのプロフィール

クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。

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