
誰かを乗せたい。何かを置きたい。どうしても「コクピット」に手を伸ばしたくなる。このガンプラには、そんな奇妙な誘惑がありました。「HG ガンダムベース限定 TOLRO-800 -トロハチ-」。

トロハチを組み上げて最初に目を奪われるのは、間違いなくコクピットです。丸く、広く、そして妙に静か。そこには「何もない」がありました。もちろんディテールはある。モールドもある。情報量も十分。なのに、不思議と感じるのです。余白だ、と。

作業ロボらしいオレンジイエローの成型色は完璧。窓際の強い光に晒しても揺るがない安心感。エッジはシャープで、プラスチックとしての気持ちよさに満ちています。



それでも。視線は何度もコクピットへ戻ってしまう。なぜか。そこが「完成していない場所」に見えるからです。ハッチの透明な殻の内側。座席。空間。気配のない操縦席。ここに誰かがいたら? 工具が転がっていたら? 少し汚れていたら? ――そんな考えが、次々と頭の中に流れ込んできます。

トロハチのコクピットは、ディテールではなく想像力を収めるためのスペース なのかもしれません。ガンプラなのに、ジオラマの入口。メカなのに、物語の発火点。「何かをしたくなる」という感情をここまで強く引き出してくるキットは、実はそう多くありません。トロハチは、組み上げた瞬間に完成する模型ではない。コクピットを見つめたその時から、あなたの中で静かに続きを待ち始めるガンプラなのです。

機動戦士ガンダムUC episode1「ユニコーンの日」(セル版)