
日本の周辺海域の警戒・監視の任務をこなす海上自衛隊のP-1哨戒機。エンジンや電子機器にトラブルを抱えやすく、稼働率が低い……といった実機に対する巷の批判はさておき、新しいプラモデルになったことはおめでたいこと。ピットロード製の1/144スケールP-1は、新鋭機の最新モデルとしてかなり楽しい内容になっているので、まずはそっちにフォーカスしよう。
全体の設計思想は、大きな部品でシルエットを決めつつシャープさや緻密さが求められる要所をこまかなパーツでフォローするというグレートウォールホビーの現用機キットに通じる。これは風防用のカット済みマスキングシートや機首錘の付属といった点でも同様だ。プラスチックパーツは実機の微妙なブルーグレーをイメージした色合いで、組むだけでも見栄えがする。

まず楽しいのは塗り分けが楽ちんな「タイヤとホイールの別体化」だ。1/144スケールではその小ささからタイヤとホイールが一体のパーツで再現されることも多いが、大型機ならではのメリットを活かして分割されている。ただし、着陸脚そのものは展開/収納が選択できるため、飛行状態を選択して組み立てるとこのおもてなしの恩恵は受けられない。ここで第一の「どっちで組もうかな」が出現する。

次に目を引くのがフラップとスラットの扱い。主翼前縁のスラットと後縁のフラップは別パーツとして分割されており、開閉(ないしアップダウン)を選ぶことで離着陸時か巡航時かを表現できる。スラットやフラップの展開時にだけ露出する赤い警告色は同梱されたデカールが鮮やかで、複雑なラインも一発で再現可能だ。ただしこちらも、巡航姿勢となればこのデカールの出番はない。任務中の伸びやかなラインを取るか、離着陸時のギミックフルな姿を選ぶか、第二の「どっちで組もうかな」の出現である。

機体番号も悩ましい。デカールには厚木、鹿屋、下総の各基地所属機が収録され、試作機改修の5502号から量産初号の5503号、さらに35号機までじつに計34機分の番号を網羅している。航空祭などで目撃した機体の再現もまずまちがいなくできるだろうし、教育航空隊の機体を選ぶのか、即応配備されている部隊機を選ぶのか、塗装や汚しと組み合わせれば、同じ箱から何通りものP-1が生まれることになる。第三の「どっちで組もうかな」がここにある。

全長264ミリ、全幅246ミリという取り回しやすいサイズに、嬉しさと悩ましさを同時に呼び込む仕掛けを詰め込んだキットは、批判にさらされてきた実機とは逆に「選んで迷ってまた作る」という豊かさを保証してくれる。このP-1をどう仕上げるかは常にあなた次第であり、このキットを一度きりで終わらせるのはもったいないように思える。単に完成形を目指すのではなく、作るたびに違う答えを導き出せるピットロードの最新キット。ぜひあなたも手にとって、その理路整然としたパーツ構成と豊かな選択肢を堪能してほしい。