

同じものを素早く安価に作るのが大量生産。反対に、ひとりひとりが望みのものを手に入れるために自分でなんとかするのはDIY。プラモデルは「だれが作っても同じになる」ということが大事なのと同時に、「せっかく作るなら”自分だけの何か”にしたい!」というワガママも受け止めるプロダクトです。なんと面倒なことでしょう。そこに海洋堂のマブQです。グラジエーターというSFメカのプラモデルを、マーブル模様のプラスチックで成形しています。これはどエラいことです。


金型の中にあえて黒と白のプラスチックを流し込み、お互いが混ざりきらないことで生まれるランダムな模様を「マーブル」と呼ぶ豪胆さ。特段新しいことをやっているわけではないのですが、この製法のお陰でひとつとして同じ模様ができないという逆転の発想。本来許されないはずの「製造上のゆらぎ」によって素早く安価に、ひとつひとつちょっと違うものを作る!大量生産品であるにも関わらず、「ガチャ」の要素が乗っかっているというのがオモシロすぎるんだよな〜。

一応キットの話をしておくと、そもそもグラジエーターはだいぶ組みやすくてカッコよくて不気味なフォルムのメカであると同時に、同社の既発品であるシュトゥルムケーファーと共通の脚部も設計が改められているので組みやすく進化しています。関節を曲げる角度が選択式になっているので「パッケージと同じポーズにしたいんだが!?」というときにちょっとまごつきますが、いちばん深く曲がったポジションを選べばOK。

で、説明書に「塗装指示」は書いてありません。強いて言うなら「光沢のクリアーを吹いとけばいいっすよ」と書いてある。ツルッツルのマーブル模様、たしかに磨いた石みたいな質感になってこれがめっぽうカッコいい。「塗らなくてもいい」じゃなくて「塗ったら模様が見えなくなっちゃう」というのがこのプラモデルのキモですよ。個性を出すための塗装じゃなくて、個性を保存しておくための無塗装!ああ、パラダイムシフト!

いやオレは塗りたいんだ、という人は通常カラーの商品を買えばいいんです。でも、塗らなくても世界にひとつの完成品が手に入るプラモデルがここにはある。どうですか。だれも不幸になっていません。塗るの塗らないの、どっちがエラいだとか、パチ組みするのも自由だとか、いつかは塗装にも挑戦しようとかじゃなくて、「プラモデルにはありとあらゆる楽しみ方が残されている遊びなんじゃよ」ということが製品そのものの表面から漂ってくる素敵なプロダクトだと感じました。数量限定商品のマブQを、みなさんもぜひ。
