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【ここが神パーツ!】ウクライナから飛来した超高速ステルス無人偵察機D-21は「Gパーツ」に愛がある。

 「なんだチミは!」と言いたくなるほどぶっきらぼうな見た目。全長13mの米国ロッキード社製無人偵察機、D-21である。こんな珍妙な機体をウクライナの人が新規にプラモデルとして開発し、日本に送り届けているのだからウクライナ人は本当に強い。アメリカのとんでもない飛行機が好きなオレは予約注文開始時点で一も二もなく発注し、ついにこのプラモデルが手元に届いた。やったね!

 フタを開けるとダンボールのハコがさらに出てくる方式のパッケージ。パーツの半分くらいが地上で機体を転がすためのドリー(台車)なので、だいぶシンプルな構成。美しい曲面と微妙なディテールの入った笹の葉のようなカタチのパーツが胴体の半分を占めている。

 この機体は空中で母機から発射されると敵地の上空をとんでもない速さで飛行しながらガシャガシャと写真を撮影し、フイルムの入った偵察ポッドを分離してから自爆、偵察ポッドは空中で他の飛行機が回収する……という無茶苦茶な計画であった(当然ながら実戦では意図した成果を上げられなかった)。

 母機となるのはこちら。ああ、SR-71ですね。惜しい。これはA-12と言って、米空軍がSR-71として運用する前にCIAが使っていた機体(正しくは「D-21を運用できるようにしたA-12」であり、これは特別に「M-21」と呼ばれた。ああややこしい!)なのでちょっとカタチが違う。厳密に言うと1/48スケールのD-21に合わせられる「A-12(つーかM-21)そのもの」のプラモデルは存在しない。しかし、本キットには「母機に搭載するためのパイロン」がちゃんと入っている。合体する相手はこの世にいないのに、合体に使うパーツだけがある。ロボットのおもちゃでこんなことがあったら子供は大泣きである。

 昨年のホビーショーにてこのキットを展示していた輸入代理店のアニキは言っていた。「合体できるM-21のキットはないけど、SR-71なら同じスケールのがあるよね。キットに入っているパイロンを使ってD-21を載せて、片目を瞑ればOKだよ」と。G-1とG-2のパーツはただの板切れのように見えるが、夢の超高速トンチキ偵察計画の似姿を作るために入れられた、ウクライナからのおちゃめな贈り物なのだ。じっさい、ハセガワやアメリカレベルをはじめ、いろんな模型メーカーが現実にはあり得ない組み合わせとして「SR-71とD-21のセット」を売ってきたんだし、いいじゃないっすか。1/48でその遊びができるってことよ。

 幸い、手元にはこんなこともあろうかと買っておいたドイツレベル社の1/48 SR-71がある。プラモデルのいいところは、実物に忠実に作ることもできれば、自分の見たい景色のためにそれらしいウソをつくこともできる点にある。多くの戦争映画で実在兵器が「他の兵器の役」を演じているように、このSR-71にはM-21の役をやってもらう。このふたつが合体したらなんと楽しく、カッコいい模型になるだろう。板切れ2枚が見せてくれる夢はとても大きく、エキサイティングなのだ。だからこれが、神パーツ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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