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30MSシャニマス用オリジナル衣装に込められた「プラモデルの特性を生かし切ったアシメデザイン」を読み解く!

 バンダイスピリッツの「30MS アイドルマスター シャイニーカラーズ」シリーズにラインナップされている オプションボディパーツ、「アルファシスターズファンタズム1」である。その名前を書いただけですでに文脈が重層的すぎるのだが、簡単に整理すれば「シャニマスのプラモデルで遊ぶときに頭部をすげ替えて遊べるプラモオリジナル衣装」だ。デザインは島田フミカネ氏で、上の写真を見ればわかるとおり無彩色の白/灰/黒を基調にし、クリアーブルーの差し色が特徴的だ。

 プラモデル本体に頭部は入っていないので、既発売の櫻木真乃(の頭部だけ)を移植するか、頭部だけで販売されている風野灯織/八宮めぐるのセット、あるいはほかの30MSシリーズのキャラクターの頭部を移植することで五体満足な「完成品」が手に入るという仕様。順列組み合わせで好みのユニットをプロデュースできる……というアイドル✕プラモデルの組み合わせならではの遊びだ。

 このプラモデルを組んでいてすごく良かったのは、「衣装が左右非対称」であること。右腕と右足は肌が露出しているのだが、左腕と左足は黒いアームカバーとタイツで覆われている。ドレスそのものは左右対称なのだが、左右対称な人型のプラモデルを組むにあたって避けられない「腕と脚を二度ずつ組む」という工程が、ただ2色になっているだけで反復作業にならない、というのはとても面白い体験だ。

 そもそも30MSシリーズは組み換え遊びで自分だけの女の子フィギュアを作り出すというコンセプトなので、ほとんどの接続部に互換性がある。売られているのは予めメーカーが想定した「プリセット」であり、ユニットごとのアウトラインや色が違ってもお互いがすんなりと組み合わさるように設計されているのだ。

 おかげでユーザーは無数にある色と形の組み合わせで自分だけのキャラクターを生み出せるし、メーカーもすべての部分を新規に設計せずとも、既発売製品に入っているパーツを一部流用しながらさまざまなバリエーションを展開できる(もっと突っ込んだ言い方をすると、パーツを囲うワクにはスイッチと呼ばれる機構が組み込まれていて、任意の場所で同梱/非同梱を選択できるようになっている)。

 バンダイスピリッツ(と島田フミカネ氏)が今回トライしたのは、パーツの互換性と「過去製品からの部分的な流用」を最大限に生かした左右非対称デザインというわけだ。腹の中央部とサイドのグレーの部分でシワの入り方を変えて材質が違う感じを出したりと、芸も細かい。

 言ってしまえば腕と脚の色が左右で違うだけではあるのだが、組み味としては「左右で同じことの繰り返し」と違い、「いま右腕を組んでいる!」「こんどは左腕だ!」という気持ちの切り替えがじつに効果的だと感じた。

 かつてほとんどのプラモデルがそうであったように、「塗る前提」の設計では2色のパーツを同梱すると不要パーツがたくさん出てしまう。しかし、体の部位ごとに、さらには左右それぞれの腕や脚に至るまでアセットを呼び出してレンダリングするかの如く最適化されたプラモデルにおいては、プラスチックの色を活かし、組み替えることが塗装表現と等価になりつつあると言っていいだろう。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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