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プラモデル作りの強力な助っ人、遠近問わずの視覚サポートデバイス「ViXion01」がスゴいって話。

 突然ですが、皆さんはプラモデルを作るときに肉眼で何もかもが見えていますでしょうか。あ、拡大鏡のセールスではありません。本日私がどうしても訴えたいのは、「目のピント調節機構」を外部装置に任せてしまうというとんでもないコンセプトで作られた『ViXion01』がもしかしたら全人類をハイパーモデラーにしてしまうかもしれない可能性を秘めているよ、という話です。あ、老眼鏡のセールスでもありません。私はメガネ店のスタッフから「まだ老眼じゃないから大丈夫です」とお墨付きをもらっています。ということで、このデバイスのプロトタイプを数日借りて試した顛末を書きます。

ViXion01|オートフォーカスで眼のピント調節をサポートする次世代アイウェア

▲画像提供/ViXion株式会社

 このメガネのようでメガネでない、なんとも不思議な見た目の機械(オートフォーカスアイウェア)がViXion01です。眉間に仕込まれたセンサーが対象物の距離を測り、両目のレンズを通して見ている場所に爆速でフォーカスを合わせてくれます。メガネと違うのは、機械が人間の機能を能動的にアシストするという点。みんなが大好きなパワードスーツが運動機能を強化してくれるように、このデバイスは視覚という身体機能を拡張してくれるというワケです。

※動画はViXion01での見え方を再現したイメージ(提供/ViXion株式会社)

 スゴい技術で作られているため詳しく説明できませんが、レンズはモーターを使わずに電気の力で音もなく動きます。見た目ではどこがどう動いているのか全然わからない。でも近いところだろうが遠いところだろうが、顔をそっちに向けるだけでビュッとピントが合うのです。実際にかけてみるとあまりにも当たり前に「見える」ので、最初は何がすごいのかわかりません。が、これを外すと「うわ、”見る”ってけっこう大変なことだったんだな」ということに気付かされます。

▲私、普段はメガネをしてプラモ作ってます。ちなみに「メガネ on ViXion01」はできないのであしからず。

 まず「メガネしてたら見えますよ」という人に伝えたいのは、手元数cmから無限遠までこれ一本で見えるということ。私は左目だけが極度の近視ゆえに、メガネで矯正していると近接視野にフォーカスを合わせづらいという苦労がありましたが、ViXion01を適切に設定して装着したところ、近くのプラモも遠くの景色も同じように見られることに驚きました。老眼で苦労している人にもViXion01を貸してみたら「うわ、どこも同じようにくっきり見える!」と驚き、大感動していました。裸眼と矯正視力を使い分けたり、レンジによって複数のメガネを使い分ける煩わしさからの解放であります。

▲眉間のセンサーが対象物との距離を測り、左右のレンズが視力に合わせてピントを調節してくれます

 そして「メガネしてなくても見えるから大丈夫ですよ」という人に伝えたいのは、ものすごく近くからものすごく遠くまで、シームレスに、かつこれまで以上にクッキリとラクに見えるようになりますよ、ということ。要は、筋肉で動かしていた目のフォーカスが外部のデバイスによって強化されるんですよね。鼻先までパーツを近づけてもプラモデルのスジ彫りにバシッとピントが合うし、そのまま顔を上げて説明書が読める。自分の筋肉ではない力でフォーカスが移動すると、目が疲れないのです。

 ちなみにこれは拡大鏡ではなくあくまでも「肉眼での見た目をそのままに、フォーカシングをサポートする装置」です(と言いつつ、わりと近い場所をまじまじと見ると実物よりちょっとだけ大きく、コントラストが強く感じられるエンハンス的な効果があります)。
 また、最初に右目と左目の視度調整をして、鼻パッドの高さや瞳孔間距離も入念に決めないとなかなかクリアな視界が得られません。このへんはよりレンズが大きくなれば解決しそうですが、現時点での技術的な限界ゆえの難しさ。開発中のスマホアプリを使えばセッティングが保存され、Bluetoothを介して即座にプリセットを呼び出せるので、毎度ごちゃごちゃいじらなくてもいいのが救いと言えましょう。

▲度数がリアルタイムで調整されているのが可視化!

 プラモデルを作るという用途で言えば、鼻先数cmという極端な場所にフォーカスを合わせようとすると瞳孔間距離をめいっぱい寄り目にしないとキレイに見えないこと、視度調整を極端に近接側に設定した状態では無限遠側のピントが合いにくいこと、また乱視の直接的な矯正には対応していないことなどが弱点として挙げられますが、対象物と常識的な距離を取って作業するのであればテレビと説明書とランナーと手元のパーツにヒュンヒュンとピントが合う様子が味わえるはずです。そうそう、眉間のセンサーは照度に左右されない仕組みなので薄暗いところでもピントが合うのが嬉しいところ。

 いちばんおもしろいなと思ったのが、イマドキこのデバイスの「気持ちいい見え方」をビジュアルに紹介する動画がないことです。というのも、個々人の目の特性に合わせて視度を都度調整し、見る場所によってリアルタイムに、目が本来持っているフォーカシング機能と協調するかのように働くため、カメラを通して追体験することがとてもむずかしいのです。つまり、これは自分で装着してその見え方を「体験」しないとそのスゴさがわからんのですね。

▲スマホから顔を上げてもビュッと見えます。見た目がバトーさんなのも近未来的でよろしい。

 はいそれならもう私すぐに買って試したいです、という人は現在進行中のクラウドファンディングに飛び込んでください。実際にかけてみないとわからないけど興味あるな、という人はぜひとも各地で開催されている実機展示に赴いてください。オートフォーカスアイウェアとしては初の市販モデルであり、とっても大事な「見る」を拡張してくれる新しくて楽しい装置、ViXion01。みなさんも、ぜひ!

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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