夏休みです。夏休みですからお出掛けをして思い出を作りましょう。
というわけで、行ってきました。静岡市にある「駿府の工房 匠宿」へ。 匠宿は伝統工芸体験施設。竹細工や陶芸、染め物など、本格的な伝統工芸を気軽に体験できる施設。そこにこのほど、模型体験ができるようになったというので早速予約をして車を走らせました。
>歴史と未来を結ぶ場所 「駿府の工房 匠宿」模型工房
そもそも静岡になぜプラモデルメーカーが多いのかという点については、かの家康公が駿府城や久能山東照宮を建てるにあたり、全国から腕利きの職人を集め、その職人が静岡に定住し、木工の技術が定着、引いてはプラモデルの金型作りへとつながった……というのは皆様ご存知のとおりかと思います。つまり、伝統工芸に端を発するプラモデルが匠宿で体験できるようになるというのは自明の理と言えるでしょう。我々は伝統工芸をやっていたのです。
さて、匠宿は実は2年ほどまえにリニューアルオープンした施設。お洒落な建物の立ち並ぶ一角をあるくと見えてきます。親の顔より見た星のマークが。
ミニ四駆、ロボクラフト、プラ板などの体験に混ざり恐竜プラモの組み立て体験があります。最近再販された1/35恐竜シリーズ(いわゆる「旧版」)のティラノとトリケラがそれぞれ90分1800円と1500円(それぞれ現在のオープン記念価格)。予約した時間になったらトリケラトプスを受け取り、いざ体験スタートです。講師にはタミヤ社員の大石さんが工房長として勤務しており、困ったことは丁寧に教えてくれます。
体験を始めてみると匠宿、そしてタミヤが「プラモデルの体験」とは何をするものなのかとよくよく考えたのだなという事が伝わってきます。90分とは言いましたが、準備や片付け、乾燥待ちを考えると実作業時間は60分ほど。その中で実際に行う作業としては、恐竜を組み立てる、筆塗りで塗装をして乾燥させる、ウェザリングマスターを使い仕上げる、の三行程です。
筆塗りは基本単色で、細かい塗り分けも推奨されませんし、そもそも塗料もそれほど多くの種類が選べるわけではありません。プラモを作り慣れている人ならば物足りないと思うかもしれません。確かに私も体験会場に行くまでは沢山の塗料あって好きに塗れるんかなーなどと思っておりました。これについてはおそらく、組み立てた恐竜を渡して好きに塗ってね!という形も検討されたのだと思います。しかしよく考えてみれば、それは単なる「色塗り体験」なのであって、模型体験ではないのだということに気付かされます。
タミヤの切れ味のいいモデラーズニッパーと、すぐに接着できる速乾の流し込み接着剤を使いキットを形にする。タミヤの水性アクリルのつや消しを瓶からそのまま塗ってドライブースで乾燥させる事で単色ながら筆ムラの少ない塗装を完成させる。ウェザリングマスターを数種類塗りこむことで色のグラデーションや爪や歯の塗り分けを完了させる。
わずかな体験時間の中に、切って、貼って、塗って、仕上げる。この模型製作の要素をすべて盛り込んだ実に秀逸な体験プランだと感じました。そして無論完成品がかっこよくないといけない、だから単色塗りとウェザリングマスターでかっこよくできるベテラン恐竜プラモの二人が選ばれたのでしょう。ステゴは背ビレを塗り分けたくなってしまいますから。
シンプルながらかっこいい。家で作ると小賢しい塗り分けとか合わせ目消しとか考えたりしてしまいますが、実に根源的で楽しい模型体験でした。スナップキットの体験とか、ミニ四駆の製作とかは色々なイベントでも行われています。勿論それもプラモデルの入口としては素晴らしいのですけれど、入口からひとまずの出口までエスコートしてくれる匠宿の模型体験、これはおすすめ出来ますね。
私はたまたま父と兄が「伝統工芸の師」としてプラモデルを教えてくれました。そういう環境が無い子もこの伝統工芸の沼にハマる入口となる場所があるというのは嬉しいものです。 なお、現在オープン記念イベントで毎時間帯の受付一人目は、トリケラトプスなら漆塗りの角、ティラノサウルスなら茶染めのネクタイのついたスペシャル仕様がもらえるそうです。合計50個限定ということなので、おそらく8月23日くらいまでですかね。このスペシャル仕様はまさに伝統工芸×伝統工芸の思い出の一品になりますので、是非、この機会に静岡にお越し下さい。
>歴史と未来を結ぶ場所 「駿府の工房 匠宿」模型工房
〒421-0103 静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
TEL:054-256-1521 FAX:054-256-1584
開館 10:00~19:00 月曜定休(電話によるお問い合わせ 10:00〜18:00)
16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。