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タミヤの新作飛行機プラモ、F-35Aがどうして組みやすいのかを解剖する。

 上はタミヤの新作、1/72 F-35Aの操縦桿を取り付けようとしているところです。接着剤を塗ったパーツを近づけているのではなくて、操縦桿とサイドコンソールの一部が一体になったパーツを所定の位置にドライ(=接着剤を付けていない状態)でフィットさせます。合わせる場所は大きく幾何学的な形状に切り欠かれているので、ポンと置くだけで間違いようのないところにスパッとハマります。合わせたら、そこに流し込みタイプの接着剤をちょんと染み込ませればOKなんです。昔のプラモと違うでしょ。

 タミヤの最近のプラモデルがなんで組みやすいか。それはノリシロがデカいからです。プラモデルのパーツというのは大きさもまちまちだし説明書をよく見ながらユーザーが頑張って貼る位置を見極めて、接着剤をそっと塗ってから慎重に角度を決めて乾燥するまで待つ……みたいなのがちょっと前まではフツウでした。しかし速乾タイプの流し込み接着剤というゲームチェンジャーが現れてからはプラモの設計も少しずつ変化してきました。「パーツを所定の位置に置いてから、合わせ目に接着剤をスッと流せば固定できる」ということは、ノリシロが大きければ大きいほど位置決めや角度の調整に気を使わなくていいということです。

 そういう前提を頭に置いて、このプラモデル組んでいて一番ビックリしたのがこれです。ミサイルとか爆弾のパーツ。F-35って胴体の中にミサイルとか爆弾をしまうことでステルス性を確保できるんですが、それだと完成品がツルンとした見た目になってなんだか迫力がない。そこで「ステルス性を無視してミサイルや爆弾を主翼の下にぶら下げた状態」(ビーストモードと俗称されています)を再現できます。ビーストモードの再現自体はいろんなメーカーが実現しているのでそんなに驚くことじゃありません。しかーし。

 飛行機プラモを組んだことがある人ならわかると思うんですが、飛行機に武装を装着しようとすると、主翼にパイロンという板、そこに決まった武装を保持するためのランチャーを取り付ける必要があります。主翼に穴が開いていてそこに板状のモノを貼るというのは接着面積が足りなかったり角度がビシッと決まらなかったりして案外面倒なのですが、このプラモは接着面積を充分に取って、角度がビシッと決まるようにパーツが分割されています。しかもどのパイロンが主翼のどこにつくか混乱しないようにLとかRの刻印も入ってます。ありがたい!

 でね、ミサイルというのはだいたいが細長い円柱に小さい翼がくっついたもんですから、ランチャーに接着しようにも全然接着面積が足りない(本物は小さいアームみたいなのでカチッと把持するんですが、プラモデルのサイズだとその機構はほぼ再現できないんですわ)。円柱だとミサイルも右や左に傾いたりしてあまり調子が良くない。

 そこで今回、タミヤはミサイルとランチャーが接するところを大胆に削り落として平面にしているんです。リアルに見えないかも……と思うかもしれませんが、完成したら全然気になりませんし、実機の写真を見てもランチャー(LAU-151/A)とミサイルは結構ビタッとくっついています。なるほど〜。

 爆弾は流石に直径が大きいので一部を平面にしてしまうと形状をゴマカシているのがバレてしまいます。こちらは反対に大きめの三角柱を側面に彫刻し、パイロン側に同じ形の大きな受けを作ることで確実な接着を可能にしています。

 あとめっちゃビックリするのがGBU-12の後端にある小さな安定翼。接着剤なしでもスパッと固定され、角度のブレもいっさいないんですよね。タミヤのプラモデルは基本的に接着剤を使用する前提で設計されていますが、「スナップフィットにしようと思えばいつでもできるだけの精度があるんですよ(でもそうしないことでプラモデルのいろんな面白さや設計の自由さがあるんですよ)」というメッセージを私は受信しました。妄言かもしれない。どうだろう。

 しかもね、ミサイルや爆弾を貼るときって機体を裏返して作業しますよね。ほとんどの飛行機模型は「機体が全部完成してから最後に武装をくっつける」という順番で指示されるんですが、本キットでは「胴体や水平尾翼を貼ったら裏返して武装を付ける→元の姿勢に戻して垂直尾翼を貼る」という順番になっているんですよ。そうすればせっかく貼り付けた垂直尾翼が机にぶつかって曲がったりしないもんね。組む手順があくまでも組む人の視点でちゃんと考えられてるのすごいな……と思いました。

 操縦桿の話、ミサイルの話、組み立ての順番……と話があちこちに飛んだような印象があるかもしれません。しかしタミヤのプラモがいつも心地よく組めるのは、「実際に組むときにこういう設計になってないと正直キツくないですか?」「この順番で組むと機体を壊してしまう可能性がありませんか?」というのを徹底的に考えた設計と、組み立て説明書がガッチリと手を組んでいるからなんですよね。そんじゃまた。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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