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プラモデルが好きだから、接着剤でつながれる/ウラジオストクの模型店

 「このプラモデルは接着剤がいるぞ。一緒に買うか?」と店主のおじさんに聞かれました。
 あまりに驚いたせいでうまく返事ができたか記憶がないけれど、嬉しくなって「ありがとう! 接着剤は持ってます!」的なことを返した気がします。
 この瞬間、プラモデルという文化が、文字通り世界でつながっていることを実感したのでした。おもちゃ屋さんで見つけたズベズダのミニキット。当時買ったものとは違うけれど、ことあるごとに思い出すエピソードです。

 数年前、まだ海外旅行が今よりも自由な時期。ぼくは極東ロシアと呼ばれる地域、ウラジオストクにいました。2時間ちょっとで行けるヨーロッパという謳い文句と、「冬の厳しいイメージのあるロシアだけど、夏なら避暑になるかも!」ということで夏休みを利用して、海外旅行としゃれ込んだワケです。
 海外トイのような蛍光グリーンのS7航空の飛行機で空港に到着して、さっそくロストバゲージするハプニングもありましたが(翌朝、空港クルーがホテルまで持ってきてくれました)冒険の始まりです。ぼくが海外に行ってメインにすることは、とにかく街を歩くこと。観光地巡りよりも、その土地の空気を感じたくてひたすらに散歩します。

 ウラジオストクでも歩き回っていると、なんと「プラモ屋さん」を発見。プラモデルだけのお店は海外で初めての遭遇です。「バンダイのプラモがある」「ズベズダだけじゃなくてタミヤも!」と、海を超えて日本のプラモデルがあることが不思議な気持ちでした。日本で海外のキットを売っているのですから当然なのですが、なかなか新鮮な気持ちです。



 ひとしきり店内を回って、手に取ったのは地元メーカー、ズベズダのミニキット。レジで在庫の管理をしている様子のおじさんに「ズドラーストビーチェ!(こんにちは!)」と挨拶してキットをカウンターに乗せました。おじさんは明らかに驚いていて、「観光客がなんでプラモを買いに来るの?」という目で見てきます。とはいえお客はお客。バーコードを読み取って……と言うところでおじさんが動きを止め、こちらを見て拙い英語で教えてくれたのです(ロシアの一般の方はそんなに英語が喋れる感じではありませんでした)。「こいつには接着剤がいるぞ」と。

 世界は本当に広くて、国によってまったく違う体験ができます。予想していないこともたくさん起きます。あのプラモデル屋を見つけたのは全くの偶然だったのですが、ぼくはそこで万国共通の心配をする「プラモデル屋のおじさん」に出会いました。こういうことがあるから旅行は楽しいし、趣味は自分の世界を広げてくれると痛感したのでした。

ひぃのプロフィール

ひぃ

現在29歳 兵庫県在住の地方公務員です。
プラモデルのほかにボードゲームやTVゲームも大好きです。
キャンプにも行くような多趣味な人間です。

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