
ロボットプラモで「偵察型」ってのはよく見かけますよね。通常型は戦闘メカなんだけど、それにでっかいセンサーとかレーダーとかついてて武装が貧弱になっている……という記号でもって「なんかリアル!」「戦闘に参加しないなんて渋い!」と思わせる常套手段。その昔は戦闘機の武装の代わりにカメラを積んで「偵察型」にするのが当たり前だったのの名残と言えるかもしれません。日本では2019年に偵察航空隊が廃止されましたが、それまでバッキバキに使われていたのがF-4の偵察型(RF-4E)でした。

戦闘機の鼻っ面にバカでかいカメラがいくつも仕込まれている……というのがもう最高なんですよね。戦闘機もカメラも好きですから、オレにとってはカレギュウみたいな存在。初めて見たファントムもRF-4Eでした。雨の中えんえんと写真を撮ったのを覚えています。戦闘能力はなくて、ただひたすら素早く飛んでいって、巨大なフイルムカメラで対象を撮影する。デジカメじゃないんですよ。幅5インチもあるフイルムでガンガン写真を撮って、帰投したらそれを速攻で現像するわけです。すっごいなぁ。


さて、そんなRF-4Eのすっごい写真集が出たわけですよ。写真集と言っても、飛行機の全体像じゃなくて部分の写真がてんこもり。そんなところまで撮っちゃって大丈夫なんですか(まあもう退役した飛行機だからいいのか)ってくらい全部見せなんですよ。こういうのって中途半端に充実していると「これだけ写真があるのに特定のこの部分の写真だけわからんのだよな〜」みたいなことが起きがちですが、日本の戦闘機写真集としては史上最高レベルに網羅されています。

そしてこの飛行機にとっての武器、カメラの写真も!プラモデルは簡単にパーツ化されていて、何がどうカメラなんだか全然わからん(オレたちが知っているカメラとは構造も規模もぜんぜん違う)という感じなのに、この写真集ではもうカメラのスペックまで全部わかっちゃう。バケモンみたいなカメラの写真、それだけですごいのよ。そこがそう開いてそんなふうに入ってるんだ〜!というのが分かれば、ハッチフルオープンのプラモも(頑張れば)作れちゃいます。

もちろんRF-4Eだけじゃなく、ほかのサブタイプと共通の部分もいっぱい写真が載ってます。とうぜん普通のファントムを作るのにも絶対役立つスーパー写真集。詳細な資料に対して「ここまでわかっちゃうと全部再現しなきゃいけないみたいで手が止まる」なんてボヤキを見かけることもありますが、資料は”再現するため”じゃなくて、ホンモノの姿がわかった上でなにをやるか/やらないかを自分で決めるためのガイドブック。ほら、『るるぶ』に載ってる観光地を全部回るわけじゃないでしょ?ここ美味しそうだな、ここ見てみたいな!というところを選んでトライするのが楽しいのよ。

奇しくも『スケールアヴィエーション』最新号もファントムの特集(表紙はドンズバのRF-4Eだわな)。合わせて読んで、プラモ買いましょう。知らずに作るも楽しいが、知って作るは100倍楽しい。資料って、いいもんですよ。そんじゃまた。