
お腹のなめらかで微妙な曲面のパーツに、チョンとおへそのくぼみがあるだけで、「わ、人体だ!」と驚かされるのがよろしい。なによりですね、このリシェッタさんは黒と黄色とグレーのバランスがとてもいい。面積比がおしゃれ。しかも黄色い部位はそのまま「カスタマイズするための穴や軸に関係するところ」になっている。

つーこって、遅まきながら、やっと店頭に並んでいるところを見たのでバンダイスピリッツが展開している女の子プラモ、『30 MINUTES SISTERS』のリシェッタというアイテムを作りました。これはなにかアニメとかゲームが原作としてあるのではなく、プラモデル独自のデザイン。いろんな表情、いろんな衣装、いろんな体つきの女の子を組み替えておぬしだけのシスターを創り出せ!というコンセプト。なるほど、「先に何かがあって、それを模す」のとはちょっと違う体験っぽいですね。

パーツ数はかなり抑えられていて、部位ごとにまとめられた状態で枠に収まっているのでパーツを探している時間がとっても短い。”30 minutes”……つまり、30分で組み立てられまっせというコンセプトは忙しすぎる現代人にフィットしそうです。そんなに生き急いでどうするんですかという感じもありますが、まあせっかちになりたい日もある。組んでびっくりしたんですが、1/144スケールのガンプラを組んだことのある人間にとって、女の子というのはものすげー華奢なんですね。胸周りのパーツをつまんで、肩幅があまりにも小さいのでちょっとドギマギしてしまった。

さてこれがたとえばアニメキャラなら「この人は変身すると姿がこう変化するんだ」とか「○○のシーンではこういう装備がここにくっつくんだぜ」というお手本があるわけですが、30MSの場合はそんなもんない。ユーザーが勝手にパーツを買ってきて、あーでもないこーでもないと組み替えて自分好みになるまで試行錯誤する遊びなんスね。Nintendo Switchを買ってきて最初にMiiを作るあの感じ。言ってみればこれ、古来の「カッコいい飛行機をプラスチックで再現しよう!」という模型遊びではなく、ゲームキャラやアバターをいじっているのに似た遊びのように感じます。

別で組み立てたガンプラとも接続の仕組みが同じでさえあれば、すんなりと合体してしまうのがまたすごいところ。接着剤で貼るプラモには逆立ちしてもできない芸当だし、この世界で遊んでいる人たちにとっては、カラーコーディネートも「塗装」ではなくて「いい感じのパーツを探してくる」みたいな方向にスライドしているんですよね。
ガンダムもこの娘も同じプラモデル売り場にあるけれど、じつは先に絵のあるものを”再現”する模型と、用意されたプラスチックパーツの組み合わせで新しい絵を”作る”というのは真逆の性質じゃん、と思うわけです。これだけ海が広いと、「うまく作る」とか「よりカッコよくする」というのもひとつの価値観では語れない。なるほどハマる人がいるわけだ、と思うと同時に、自分がどうして距離を感じていたのかも少しクリアーになりました。
遊び方がわかったら、今度は自分のターンです。誰も思いつかないようなカスタマイズを悶々と考えながら、次の女の子に模型店で出会う日を楽しみにしましょうか。