「知ってる安心感」が支えてくれる創造力/キャビコ 人型重機のプラモに感じたこと。

 プラモデルにおける「自由」とは一体どのような線引きを指すのでしょうか。

 完成したプラモデルをそれ単体で一個の作品としてみるか、作品や史実の中の一部の再現としてみるか。私は史実や、設定、世界観という庇護の中で、できるだけ「自由」に楽しみたい。暖かい家の中で放し飼いされたい。寒い外には出たくないけど家はできるだけ走り回りたい。

 そんな権利ばかり主張する迷惑な犬のような私にピッタリのプラモデルがありました。NZ INDUSTRIALさんデザイン、製造販売はキャビコさんの「Ⅲ号人型重機 末期生産仕様」です。人型重機とはNZ INDUSTRIALさんの公開しているオリジナルスト―リー「Kampf Riesen Mars 1941」に登場するオリジナルロボットです。詳細な設定は「Kampf riesen mars の世界」というWebサイトをご覧ください。

 ごくごく簡単に言ってしまうと、1940年代、ドイツの設計に日本提供の不思議材料を使ったらメイン動力源がなくてもいい感じに動いた、というロボットです。世界観的には第二次大戦という史実をベースに「火星人」というSF要素をひとつまみ入れ、年表を「火星に有人飛行をした近未来」まで伸ばしており、間口がめちゃくちゃに広い。細かい設定が明らかにされていないこともあり、この世界の中ではⅣ号戦車から架空の宇宙船までをいわば「キャラクターモデル」として合わせて遊んでいいよ、と言われているかのようです。

 肩のパーツはすごいですね。5ミリほどの深さの奥にしっかりとしたディテール。1パーツでつくろうという判断に痺れます。節々のリベットも細かくてたまりません。リベットいいですよね。世の中の機械、できるだけリベットで留まっていてほしい。

 ランナーを観察すると非常に組みやすさを重視してくれているのがわかります。胴体、腕、足、それぞれが大体1つのランナーにまとまっているので行ったり来たりをしなくていいところ、パーティングラインを極力抑えるように分割された金型、前後がわかりにくいパーツにつけられた矢印。キャビコさんのこちらに寄り添う気持ちの伝わるランナーです。

 強いて苦言を呈するなら、ランナーの親切さに比べて説明書が少しわかりにくいかなと思う部分があります。キャビコさんの金型屋としての長年の職人技と、プラモ屋としての見習い感が同居しているようで面白味もあります。……と、いろいろ感じながらスケールモデル的ディテールでポリキャップを挟んでロボットをつくる感触を楽しんでいるうちに完成。よし、今だ、日本に残っていた人型重機が61式戦車制作時にごにょごにょあったという自分設定の元、合体!

 世の中には本当に何にも縛られずにプラモデルを楽しんでいる人たちがいて、そういう人たちを史実や設定に本当に忠実な精緻なプラモデルを作る人と同じくらいに尊敬しています。本当に自由に妄想の羽根を広げて何かを生み出すこと。いつかは私もそこまで至りたいとは思っていても、今は世界観に守られた「自由」が精一杯。
細かい設定を明らかにせず、余白を持った世界観を与えてくれるNZ INDUSTRIALさんが最初の人型重機発売以来、定期的に新商品を出して、この世界を守ってくれているのを見ると、勝手ながら、「この庭で思いっきり遊んでいいんだよ!」と言ってくれているような気がするのです。

 そう、何もかもが自由な外に駆け出す勇気の出ない犬の私は、柵に守られた広い広い庭の中で、思いっきり駆け回って「自由」を謳歌するのです。

いち
いち

16の頃に別れたプラモデルと36で再会した82年生まれ。