グッスマのプラスチックモデルブランド「MODEROID」からパワーローダーが発売された。『エイリアン2』に登場した黄色いパワードスーツは、そのケレン味と驚くべき特撮で多くの人を虜にしてきた。
リプリーが黄色い作業機械を着込んでエイリアン・クイーンと取っ組み合いをする印象的なシーンのおかげで、このマシンはこれまでにもいろんな立体物になっているが、今回はかつてハルシオン(日本ではツクダホビー)が売っていたのと同じ1/12スケール。イマドキのプラモが備えているべきシャープな造形と可動性能を獲得しているのはもちろん、いちばん注目すべきはリプリーも四肢が動くプラスチックモデルとして同梱されていることだ。
アクションフィギュアよろしく関節に可動ギミックを仕込まれた設計で、服のシワやスニーカーのディテールも21世紀基準の表現力になっているのがすごく嬉しい。グレー単色のプラスチックだけど、パワーローダーの動きに合わせて(本来の機能としては反対だけど)ポーズが追従させられるのはメカの魅力を何倍にも増幅してくれる最高のプレゼントだ。
果たしてシガニー・ウィーバーは自分が灰色のプラスチックに分解され、キコキコ動く人形になっていることを知っているのだろうか……なんて思いながらパーツを切り出し、頭、胴体、腕……と組んでいく。
腕……。リプリーの左腕パーツに目を走らせる。あった。見まごうことなき、SEIKO 7A28-6000。ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした左右非対称の腕時計がそこに彫刻されている。ファンの間で「リプリー」と通称されるこの時計は今世紀になってから何度も復刻されていて、オレもホワイトマウンテニアリングとのダブルネームで発売された7T12-0BW0を愛用している。
映画で有名になった時計を後追いで買って、オリジナルとなったリプリーのプラモデルが出て、そこにシンパシーを感じるなんて、なかなかないことだ。母性を爆発させ、相手をキッと睨みつけるリプリーの迫力はちょっと恐ろしいものがあるけど、彼女に見守られながら大きくて強そうなパワーローダーを作ろう。作っている間は、オレも同じカタチの腕時計を着けているよ。
模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。