仕事が忙しいと何が辛いかって、私の場合は「明日の仕事のために休む」みたいな感じでオフの時間がどんどん本当の意味でのオフで無くなってくるところだ。
そのようにして好きなアスリートやクリエイターを特集したムックは最初の数ページのインタビューを読んだだけで興味が失われてしまう。見ようと思った映画や、行こうと思ったイベントに行かなくなってしまう。「プラモデルもそんな風に忙しさに飲まれてしまう趣味になってしまうかもしれない」そんな危機感が私の脳裏をよぎる。
そういうときに、自分のオンとオフの陣地の取り合いで反撃の狼煙を上げてくれるのはデフォルメキットだ。
デフォルメキットは対象の特徴をうまく捉えながら、見た目を変形させる。大抵がギュッと縦横のバランスが詰まったもので、プラモデルの世界ではなんとなくかわいらしくおもちゃっぽい姿になる。
モンモデルのワールドウォートゥーンズシリーズ ドイツ重戦車 キングタイガー ポルシェ砲塔は、簡単なピンを差し込むことで転輪を固定する。それによって、転輪がコロコロ回るのだけども、そこで「おもちゃっぽい」という文脈を拾っていてとても感動した。そういえばSDガンダムのBB戦士なんかも、昔は弾丸が飛ばせたりしたよな……。
モンモデルのワールドウォートゥーンズシリーズは接着剤を使わない。キャタピラも輪っかの状態で箱に入っているのでありがたい。
作りやすそうに見える、このデフォルメされたポルシェ砲塔のキングタイガーの良いところは、細いパーツが数点あるところだと思う。
取っ手やワイヤーが細いことで、メリハリがよく出る。これらを慎重に切り取る作業には、一瞬スケールモデルを製作している時間と同様の空気が流れる。それによってふと「ああ、プラモデルを作っているな」という気分になるし、少しだけ難しい作業が入ることで「乗り越えたぞ」と充足感を覚えられるからだ。
組み立てができてしまえば、あとはこっちのものだ。なぜかって? 仕事中にいくらでも「家にあるあのキングタイガー、何色に塗ろうかな」なんて考えることができるからだ。考える時間がある趣味はプラモデルに限らず良い趣味だ。モンモデルのデフォルメされた戦車は出来上がる速度と作る楽しさで、私のプライベートを今日も満足させてくれる。
1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。