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最高のゲームバランスで走り切る傑作飛行機プラモ/アルマホビー 疾風

 ランナーにくっついたままのパーツを眺めたり、少しだけコクピットを組んだ状態でもう感動してしまい、キットレビューをしたアルマホビーの新作、疾風。味わいながら少しずつ進めようとしたら、面白すぎて止まらないゲームのように手が動きます。

 手が動き続けるプラモというのはつまり、「ここはどうすればいいんだろう」と考え込んだり、「ここを失敗したらどうしよう?」と怯んだりする瞬間がうまくコントロールされているということ。ゲームバランスがめちゃくちゃいい、と言い換えられます。たまに送り出す側が何も考えていない(つまりゲームの攻略法は全部ユーザーが考えなければいけない)ようなプラモもあるけど、プラモ好きがプラモを開発しているかどうかは作ってみればすぐにわかります。そこに送り手の考える「解法」がひっそりと仕込まれているから。

 説明書で示されている手順はきわめて適切。パーツを先回りして塗るタイミングは明示されているし、組み立ててから「あれ、ここに手が入らなくなってしまったな」というトラップはちゃんと回避されています。

 なによりもパーツの精度が尋常じゃありません。パーツをピタッと合わせて流し込み接着剤を少量置いていけば、本当に端正な疾風がみるみる出来上がっていきます。すごく気分良く進むもんだから、コクピットの壁は筆でさらっとそれらしい色を塗っておきます。まだ全体を塗装するかどうかなんて、決めてないけど。

 エンジンもたった3パーツだけど申し分ない立体感で、プラスチックそのままではなんだかもったいない気がします。カウリングの前面を貼り付ける前に、メタリックグレーを含ませた筆でさらっと撫でておきましょう。こんなふうに、組みながら好きなタイミングで好きなところに色を塗るのもいいものです。この期に及んでなお、全体を塗るかどうかなんて、決めてないのだけど。

 主翼の合わせも目を疑うような精度で、達人的なテクニックはまったく必要ありません。全体が十字のカタチになったところで、写真を撮っておくのが僕の習慣。水平尾翼を取り付けると塗装やマーキングで後戻りが効かなくなりがちです。画像を眺めているうちに、そのディテールがやっぱりグレーのプラスチックの中に埋もれているのが気になります。こういうときは、機体のカタチをきれいに表現してくれる銀がピッタリでしょう。

 銀を吹き付けると全体のスジ彫りやリベットがワッと浮き上がるかのように目を覚ましました。ブルーの塗り分けを一閃。これは機体の名前から連想したアニメキャラをイメージして選びました。プロペラを付けて「士の字」にすれば、そこには1/48スケールと見紛うようなシャープネスと手のひらサイズの可愛らしさを兼ね備えた疾風が姿を表します。合わせ目を消すなどの処理は全くしていないけど、こうして塗り上がってしまえば全くと言っていいほど気になりません。

 いくつかの小さなパーツがピリリと緊張感のある工程として立ちはだかるけど、いいピンセットを持っていればクリアできるイベント。何より、自分の手で組み上げていることがなんだか誇らしくなるような恐ろしい精度とスムーズな組み立ての妙を味わいながら、最後に「カッコいいプラモを作ったな!」と思える素敵なゲームバランスは、あらゆるプラモ好きにおすすめできます。アルマホビーの疾風、今年の傑作のひとつです。

 みなさんも、ぜひ。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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