家族と出かけて巡り合う、運命のプラモ。

 ワイフが美容院へ行くというので、家族で街へ繰り出す。僕らの行きつけは、おしゃれなエリアから少し離れた下町も混ざった商店街。カジュアルな服や靴も売っていて、すれ違う人たちも個性的なファッションを楽しんでいる。若者が多いが、年をいった人まで幅広い年代が商店街を歩いている。

 僕たち家族がこのエリアを好きなのには、理由がある。ゲームや模型を扱っている大型店舗がいくつかあるからだ。子供二人はもちろん、ワイフもフィギュアやおもちゃが大好きだ。今回も新しいワクワクを探しにお店に入っていく。僕の狙いはタミヤP-38だ。飛行機のプラモデルは、あまり作ったことない。だからこそ気負わず楽しく作れそうだ。

 お店に入ってすぐ娘たちがノリノリで欲しいものを探しに行く。買うと言ったつもりはないが、プラモデルを欲しがられると、財布の紐も緩んでしまう。自分の好きなものを、家族も好きと言ってくれるのはとても嬉しい。彼女達が選んでいる間に、僕も棚をチラチラ見た。見たことないパッケージの戦車が目に止まる。シンプルなデザインの箱。「ティーガーIII」と書いてある。ロケットモデルズというメーカーのキットらしい。すげーカッチョいい。

 でも今日はP-38と決めてるんだ。予算的にも両方は買えない。モヤモヤしながら飛行機キットのエリアに向かう。タミヤのキットが並ぶ棚には数人先客がいる。1/48だったから少し大きめの箱かな。飛行機のカタチからしても大きいはずだ。こんなアタリをつけてキットを探す時間はすごく楽しい。

 棚の中段あたりに目当てのキットはあった。サメの歯を思わせるデカールもつくみたいだ。これはイカす。しかし、ティーガーIIIのことが頭をよぎる。娘たちのプラモデルを探している間に、ゆっくり考えよう。

 結局、子供達に連れ回され店内をもう一周した。子供達は、モルカーとかわいらしい女の子のプラモデルを手にしている。戻った時に、目の前でP-38は他のお客さんに引き取られていった。残念。僕の分まで楽しんでくれ。僕は次の機会にする。きっとティーガーIIIが今日の運命のプラモだったんだ。子供達もお気に入りが決まったみたい。

 レジで会計を済ませ、プラモデルの入った袋を誰が持つのかで揉め始める。わかるよ、その気持ち。そこにはワクワクが詰まっているもんね。実は僕も持ちたい。ケンカが始まる前に、僕が持つことにする。苦情は出るが、出資者は僕である事を伝える。有無は言わせない。大人はズルいのさ。

 家について、3人でキットを開ける。ティーガーIIIの箱を開けて最初に目に飛び込んだのはカッチリしたボディパーツ。第二次世界大戦が続いていたら、作られていたかもしれない架空戦車。車体の部品数は思ったより少ない。足回りの部品を見ると、履帯がひとつひとつ分離しているのにビックリした。ベルト式しか作ったことがないから、僕としてはチャレンジングなキットになりそうだ。貼り付けて行くだけで出来上がるんだろうか。楽しみと不安が混ざり合う。

 3人でプラモデルを一緒に作ったらすごく楽しそうだ。でもニッパーとヤスリは1セットしかないから、今回は僕が引こう。楽しんでくれ。よし、次は子供用のニッパーを買いに行こう……。

PECO
PECO

1980年生まれ 名古屋のすみっこで、自転車のったりプラモデル作ったり。