超大作プラモの兵士はとびきりのクリームだという話/タミヤ ドイツ重対戦車自走砲 ナースホルン

 僕にとって戦車や車を差し置いてフィギュアを作ってしまおうなんていうのは、クリームパンのクリームだけを指ですくって食べてしまうようなものだ。

 タミヤのミリタリーミニチュアをはじめとした陸モノのプラモデルには、乗り物と人間がセットになっているものがある。私は最初、この手のプラモデルは乗り物がメインだと思っていた。だけど、初めて完成させた乗り物の端にあったほんの数パーツの人間を作って乗せたときに「わ、ドラマが生まれてしまった」と感動して、見事に順位が逆転してしまった。

 それ以来、私は「このプラモデルにはどのような人間が付属するのか」を気にするようになった。そんな、人間ありきのプラモ観察をずっとしていると大きな問題にぶつかってしまった。

 それは「ドラマチックなポーズをしている人間が付いているプラモは大作が多い」というものだ。タミヤの1/35のナースホルンなどはその筆頭で、神秘的な響きを持つネーミングと、精密な車内、厳しい寒さを感じさせる冬季迷彩などと、まさに大作という感じ。そこに配置される人々のポーズの何と美しいことか。それに加えて、普段見かけることのない服装がさらに良い。

 集中力を強く、短く発揮することは得意だけど、じっくりと向き合うことが苦手な僕にはナースホルンは大作すぎる。クリームである人間まで辿り着くことができない。

 なんて思っていた憧れのクリームにさっと手を取ってパーツを眺めていると、4人の中で汎用性のあるポーズは1人で、それ以外は一瞬を切り取ったような姿。その中で腰をかけて狙いを定めているような表情をした男性は特に一瞬の緊張感が伝わってくる。そんな彼だけを作ると、情景から人間を1人、つまみ取ってしまったような罪深くも楽しい感覚に襲われる。

 ナースホルンは説明書にして50に分けられた工程が大作のプラモデル。インテリアの作り込みはプラモそのものにある種の神聖さを帯びさせるほどの美しさ。クリームを包んでいるパンは、どんな味なのだろうと思うと、やっぱり戦車も作りたくなってくるものだ。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。