プラモデルに荷物を添えたくて。/アメリカから突然届いたアイの話

 いま作っているプラモの景色にどうしても木箱やドラム缶を添えたくて、あっちこっち探していた。戦車模型がいっぱい生息する1/35スケールの楽園にはそういうプラモがゴマンとあるんだけど、こと1/72というちょっと小さいスケールになるとこれが全然ない。検索ワードをいろいろ試しているうちに、なんとも風情のある「荷物のカタマリ」が出現したので買ってみた。1600円でこれを作れと言われたらさすがに無理なので、安い買い物だと思うことにしよう。いわゆるプラモデルとは違う、レジンキットってやつだ。

 キットと言っても、もうこれで完成しているのだからこちらは色を塗るだけである。乱雑に積み重ねられた木箱やドラム缶、スペアタイヤもさることながら、最後にファサッとかけられた布の佇まいが素晴らしい。一体感がちゃんとあるし、上面だけじゃなくて側面にもしっかり凹凸があるのは金型ではなく柔らかいシリコン型を使って作られるレジンパーツ特有の表現だ。本来はトラックの荷台に載せるもの(そのために長方形に荷物がまとまった状態で一体になっている)なのだが、まあ地面にデポしてあってもありえない景色じゃなさそうだ。

 このパーツを作っているのはアリゾナのフラッグスタッフという街にあるVALUE GEARというメーカーだ。詳しい住所まではわからないが、まあほとんど個人経営みたいなもんだと思う。とにかくプラモの車輌に荷物を積むのが好きすぎるアニキがいろんなスケールのいろんな車輌に合わせて荷物を組み合わせ、それを複製して世界中に売っているんだろう。レジン(無発泡ウレタン)はプラスチックと少々性質が異なるので、扱いに独特のテクニックがある。それもこの黄色いカードに事細かに記載されているので、なんとはなしに目を通す。

 塗装法のくだりを読んで、思わず声を出してしまった。3行目の最後が「I like to」で始まっているじゃないか。「オレはタミヤかテスター、ファレホの塗料を使って塗装してからドライブラシをするのがいいと思う。そのあとでゲームズワークショップのシタデルカラー、黒や茶色のウォッシュカラーでスミイレするのがいいね」みたいなニュアンスだ。
 説明書というのはふつう、主体があんまり無い代わりに「かくあるべし」「こうしたほうがいいっすよ」というのが箇条書きになっているものだが、この書きぶりからはなんだかそこにモデラーが居るようで(うーん、と言いながらワープロの前に座っているのが見えるようで)すごくいい。突然の「I」に模型愛をビリっと感じてしまったから、この荷物は大切に使うことにしよう。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。