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曲線美の集合体を、理解するために組むプラモ/MODEROID TYPE-J9 グリフォン。

▲いつの間にかグリフォンの聖地となっていた茨城県土浦市。

 土浦で2月に開催された「機動警察パトレイバー 『TV-劇パト2+』展」に行ってきました、地元民の筆者です。痺れましたね。なかでも、本作のメカニックデザイナー・出渕裕氏が描いた数々の設定資料、原画の展示は圧巻でした。とくに、ありとあらゆる流線形の集合体のようなグリフォンの設定画が素晴らしく、二次元の線でありながらその複雑な面構成がちゃんと見えてくるようなラインのまとめ方はまさに匠の仕事的存在感を放っておりました。眼福。
 高まるグリフォン熱。原寸の設定画を間近で見てしまった私のこの熱は、設定画集を買うだけでは冷却できないことは明白。その設定画のラインを集約させた、一つのカタマリとしての「立体」を手に入れるしかありませんでした。そう、会場の出口で待ってましたとばかりに販促展示されていた、グッドスマイルカンパニーのMODEROID TYPE-J9グリフォンを手に入れたのです。

 ちょっとビックリするぐらいプラの状態でも十分な光沢があります。しかもパーツは光を透過させるような印象がまったく無く、とても美しい漆黒です。アニメ劇中では漆黒のグリフォンが、格納庫や夜闇の中で黒光りする大変カッコのよろしいカットが多いのですが、そんなイメージそのままの立体が組み立てるだけで手に入るのは素直に嬉しいポイントです。

 神話上の生物・グリフォンが鷹の翼を持つように、戦闘機の翼を持つレイバーのグリフォン。この翼の造形もシャープで気持ちよく、光沢も相まってパネルラインがキレイに見えます。よく観察すると、フラップとそのヒンジの部分がわずかに厚くなっていて、単にミゾを掘ったディティールでは得られない存在感があります。

 出渕氏の設定画の中でも、特に形状と角度の注意点を指示していたものがこのスネの装甲でした。スポーツバイクのシート部分のような、三日月型のスネがグリフォンデザインのキモと言ってもいいかもしれません。このスネの形状が、悪魔的な凛々しい立ち姿を演出しているように思います。

 ランナー跡も目立たない位置で工夫が凝らしてあり、部分塗装もしてあるので、組み立てるだけでも十分な完成度のアクションフィギュア的プラモデルが完成してしまうMODEROID グリフォン。じゃあ、アクションフィギュアを買ってきた方が手っ取り早いのでは……という考えもよぎりましたが、いざ組み立ててみるとそんなことはありませんでした。完成品フィギュアとの一番の違い、分解されたものを構築するというその道中に発見が沢山あったのです。

 グリフォンの装甲は流線形のオンパレード。完成すると人型にまとまってしまいますが、その装甲ひとつひとつを見てみると、バイクのカウルや、車のフェンダーのような主役級の存在感があり、かなり独特なカタチです。分解され、独立したひとつひとつのパーツは、まさに写真の切り取り構図のようであり、そこにフォーカスすることで、今まで見えていなかったカタチを再発見させてくれました。
 そしてそれらのうねりのある装甲と装甲が噛み合い、人体では持ちえない曲線が集合していき、なにやら人のカタチのようになる驚き。トゲトゲした腕や脚のパーツが意外と干渉しない、パーツの合わさり方。このあたりは組み立てて実際に触らないと実感できなかったことで、まさに立体の設定資料を読んでいるような感覚です。私は今、展示会で設定画を見た時よりも、遥かに高い解像度でグリフォンについて理解できたのです。

▲黒で統一した我が家のオーディオ機器上に飾っております。

 ジャズのようなバンド演奏は、様々な楽器によって成されるアンサンブルですが、そのトランペットやピアノ等ひとつひとつを集中してよく聞いてみると、恐ろしく器用なことをやっていて、しかもその上で他の楽器と干渉しないように演奏が組み立てられています。モデロイド・グリフォンの組み立ては、まさにそんなジャズ演奏の各楽器のマルチトラックをくっつけて、ひとつの美しい曲にミックスするような体験でした。

ハイパーアジアのプロフィール

ハイパーアジア

1988年生まれ。茨城県在住の会社員。典型的な出戻りモデラー。おたくなパロディと麻雀と70’sソウルが大好き。

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