プラモで出発、ディーゼルカーといっしょに房総半島の山里深くへ。

 何をするでもなく、ただ旅情だけを吸いたい……と思い立って友人と旅行に出かけたのは6年前のある日。東京を出て外房で一泊し、そのまま大原漁港を経由していすみ鉄道〜小湊鐵道で房総半島の山奥を横断した。いわゆる電車ではなくて、ディーゼルエンジンで走る気動車の旅である。

 旅の思い出がゴロンとハコから出てきて、思わず顔がほころぶ。正確にはブリスターにピタリと収まった塗装済みの車体。1/80のプラモデルとして小湊鐵道のキハ200形が発売されたのだ。小湊鐵道のことを知らなかったとしても、こういうひと昔前の気動車を組み立てて、そっと書棚にでも置いてみよう。質感のよい、鋼鉄のカタマリを思わせる姿。クリーンな状態で仕上げるなら、塗装はしなくてもOKだ。

 プラスチックモデルなので、ボディ以外にもランナーにくっついたパーツがたくさんある。それぞれ実車のイメージにぴったりの色だし、車内や床下も余すことなく再現されている。そしてなにより、このキハ200形はエンジンで動くということが、この模型のいちばんのハイライトかもしれない。

 古式ゆかしい直列8気筒、17リッターのDMH17Cエンジンは床下に取り付けられる。うねる線路の振動をモロに受け、ドロドロと音を立てながら闇夜の山奥を走る小湊鐵道はどこか不気味だったが、人里にある駅ではカラカラとアイドリング音を立てていたのを思い出す。

 クルマや戦車のエンジンと比較するのも楽しいだろうし、スケール的に近しい1/72のレシプロ戦闘機にくっついたエンジンと見比べるのも興味深いだろう。プラモの楽しいところは、一見関係ないような(現実では横に並べて見比べることができないような)ものでも、こうして手のひらの上でためつすがめつできることにある。

 窓枠や車体全面の小部品は塗装済みとなっているのがありがたい。パーツ組み立ては一部接着推奨だが、概してスナップフィット(ハメ込み式)になっている。パーツ数はやや多く、組み立てに神経を使うところも少なくないが、しかし合わせ目や塗装などをほとんど考えなくてもいいようになっているのが現代的。ニッパー、カッター、接着材があって、これらを慎重に使えば必ず完成させられるだろう。

 東京のすぐ近くにある、どっぷりローカルな旅。小湊鐵道キハ200形は日本人の心に刻まれた「ちょっと昔の鉄道旅」を今に伝える貴重な語り部だ。運用は1両から見られるので、編成を組まなくても鑑賞できる。では、次回から組み立ての旅に出発してみよう。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。