飛行機プラモ界のコクピット・キング。/タミヤヨンパチファントム夜話

 私は幼少の頃から福神漬が大好きで、しかも茶色いのより真っ赤なやつに目がありません。行きつけのカレー屋さんでは「福神漬をこれ以上ないくらいマシマシでお願いします」と頼むし、セルフで入れられるお店ならもう際限なく入れてしまう。カレーの風味と食感に、パリパリとした歯ごたえと甘みが加わるのがいい……とかじゃなくてこれはもう福神漬を食ってるようなもんですね。

 飛行機模型というのは飛ぶ機械のシュッとしたフォルムを楽しむのがメイン……と思いきや、気合を入れて作るのはコクピットだったりします。ツルンとした外皮では味わえない、パリパリした歯ごたえと無骨な表情がそこに潜んでいるからであり、パイロットが乗っていれば人はみなそこに注目する。なので、飛行機はカレーだしコクピットは福神漬。飛行機そのものを引き立てる存在としてウデを奮ったり(あるいはさっさとカレーの味を楽しみたいからサラッと避けたり)、コクピットを作るために飛行機を作ってるんよ、という人もいるかもしれません。

 タミヤの新作、1/48ファントムのコクピットは猛烈に精度が高くて、さらに立体的な表現もこのスケールの戦闘機模型にしてはトップクラスの緻密さ。計器盤やサイドのコンソールだけにとどまらず、パイロットを取り囲む壁やシートが収まるレールまで、ほんとうに表情豊かに立体化されています。しかも複雑なパーツ構成なのに組みやすく、お互いが干渉することもなくすんなりとあるべき位置に収まっていきます。

 それを下から支えるのが前脚の収納庫。コクピットと並んで複雑なディテールが楽しめる場所ですが、ここもメカニカルなディテールの入ったパーツを箱状に組み合わせていくと、飛行機を支える着陸脚の強固な土台ができあがります。左右に飛び出た棒状のパーツは胴体左右のパーツにしっかりと食らいつき、剛性の確保と正確な胴体幅をキープする桁として機能しています。

 寄せ木細工のような機体の内部構造と、シュッとした外皮が響き合う。カレーと福神漬がどちらも添え物にとどまることなく、お互いの味を引き立て合っているようです。前席と後席で違うポーズのパイロットもシャープだし生き生きとした彫刻。さらに、シートの位置がバッチリとキマるギミックは組んだ人だけに感じてほしい驚きの構造になっています。

 ぬかりなくアウトラインを表現したファントムに、ミチっとしたコクピットがキレイに収まるこの感触。ひとつ組んで驚いて、もうひとつ組んで塗りを楽しむ。「貼るだけで楽しい」というプラモは、そんな「おかわりの楽しみ方」も教えてくれるのです。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。