「生まれてはじめてガンプラ作る人」を観察した話。

 妻が珍しくガンプラを欲しがっていた。『SD 三国創傑伝 趙雲ダブルオーガンダム&碧竜駆』である。もともとゲーム『三國無双』シリーズをひたすらやりこむタイプの人間であること、好きなバンドの『THE BACK HORN』にちょっとだけ関係があるMSであることなどが複合要因となっているっぽいが、とにかく「趙雲」で「ダブルオー」なのが良いらしい。余裕で買えるやろ……とタカを括っていたのだが、めちゃめちゃ探した(最終的に駿河屋で定価購入することになった)。

 まず驚いたのが、ランナーをアルファベット順に左からずらっと並べ始めたことである。プラモを組み立てる時間のほとんどはパーツを探している時間。たしかに机が無限に広ければこのスタイルが正しい。PGみたいにランナーが数十枚になると大変だが、SDガンダムならなんとかなる。みなさんはランナーを素早く探すためにどんなテクを使っているだろうか。もしくは直感でどうにかしているのだろうか。もしなんかあったら教えてほしい(nippperはいつでも原稿を募集しています)。

 わりと注意深いし手先も器用な妻だが、やはり説明書の情報量がちょっと多すぎるらしい。パーツが3つ組み合わさり、さらに組み付ける順番も指定される……みたいなシーンで読解力が落ち、「それぞれの工程を分解して書いてほしい」とこぼしている。記号と数字が入り乱れるし、図もこまかくなりがちなので気持ちはわかる。

 パーツの表裏を取り違えたり、どの位置にどこまでパーツがハマっていればいいかというのもガンプラというカルチャーに触れていないと直感的に認識できないポイントだ。ガンプラを組みなれている人は、モビルスーツのデザインにも精通しているから色やカタチやそれなりに体に染み込んだ「ガンプラ設計のセオリー」を無意識にリファレンスとしてプラモを組んでいる……と改めて思い知った。

 印象的だったのは、肩のGNドライブを取り付けてモビルスーツがカタチになった瞬間「わ、かっこよくなった」と声に出していたことである。自分がどんなものを作っているのかがフワッとした状態で組んでいるから、完成形が突然現れて驚いたのだろう。色や形状が意図された塊となった瞬間に、ストンと腑に落ちる感覚がある。結局、2箇所ほど組付けを間違えたところを横から指摘しただけで、パチ組みの趙雲ダブルオーが完成した。

 興味深かったのはここからだ。左右の手に装備できる剣。説明書は帯刀と抜刀の2パターンが図示されているが、当然どちらの手に何をどう持たせるかはユーザーの”自由”である。ハコの写真や絵はそれがバラバラで、片手で構えているものやバイクに乗っているものや、腰に提げた状態のものもあって、どれが「お手本」なのかがわからないようだ。

 さらにバイク(碧竜駆)を組んでそれに乗せるとなると、パーツをいったんバラす必要がある。「なぜ組んだものをバラさなければいけないんだ……」とちょっと絶望気味になりながら、悪戦苦闘してパッケージ側面の乗車ポーズまでたどり着いた。途中、腕やら頭やらがポンポン取れる(せっかく慎重に組んだのだから、取れてはいけないものだ!と思っていたらしい)のが可笑しくなってしまったらしく、ツボに入って一人クツクツと笑っていた。

 僕らはプラモ……というかガンプラを作るとき、一応完成形を頭に描いたり、説明書やパッケージ写真の「これ」に向かって説明書を咀嚼したりスキップしたりという選択をしている。しかし、初めて組む人にとっては説明書こそが唯一の頼れる存在だから、「最終的にこの商品はどうなっているのが正しいの?」とちょっと困惑するらしい。うーん、そこらへんは見ているこっちも気づかなかった。

 人生初めての経験というのは一回こっきり。みなさんも身の回りの人にプラモを渡して、初体験を観察してみてほしい。そうすると、「プラモを初めて組む人」の思考やつまづき、気付きや喜びがフレッシュに感じ取れる。仲間を増やすときにどんなふうに背中を押せばいいかのヒントを得られる、貴重な体験だった。次は接着剤を使うタイプのプラモを渡してみて、何が起きるかを観察してみようと思う。

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からぱた

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。