ピッチングもプラモも/「メインなのに忘れてしまうアイツ」が大事。

 昔、NANDA!?ってプロ野球の番組があったのですが、伊良部秀輝投手が「投げる腕も大事だけど、こっちも大事」とグローブをはめる反対の腕をグッと身体に巻き込む動作をしていて、中学生の僕は感心したものでした。当時は今ほど野球の理論は発達しておらず、こういう話を聞く機会ってほとんどなかったのです。

 その日から投球動作におけるグローブ捌きを自主練に取り入れました。とはいうものの中学校3年生の夏まで私は干されっぱなし、小学校のときは背番号1だったのに、なんでですかね。ただ、こういう「投げる方の腕のように一見メインっぽいもの以外の部分に何かコツがあるらしい」みたいなことは自分の心に残っています。

 プラモデルは大抵、蓋を開けたらそのまま下の箱に重ねて「やるぞ!」と制作スタート。ビニールを切り、ランナーを取り出し、説明書を読み、ニッパーの刃を入れる。振りかぶって足を上げて、両腕を大きく開いて投球動作が後戻りできないところまで進むように。

 でも、ちょっと待ってください。「メインっぽいもの以外の部分」を考えてみましょう。よく考えると野球ではグローブというのはある種、象徴的な存在です。しかも投球動作の初め、グローブの中にボールを握った手を重ねながら、この両腕をどう動かしていくかは、投手それぞれの個性であり各々で最適化された動きの一つ。

 ボールを握った手がグローブから離れたそのときに、グローブはもう思考の脇にのけられそうになりますが、伊良部秀輝は言いました。「こっちも大事」と。買うときはメインなのに、作るときは端に退けられてしまう蓋、そこに描いてある箱絵は投球動作におけるグローブ。箱絵を下に重ねてはいけない!重ねても良いけど、思考の脇にのけてはいけない。なんて思わされたプラモデルがあります。

 タミヤの傑作機シリーズ1/48シーハリアーの箱絵は筆のタッチが海面の飛沫がこちらにも伝わってきそうな荒々しさが美しいキット。この箱絵のタッチを意識しながら塗装したら、確実に今までと違う自分が見えそう。グローブを意識するように、この週末は箱絵を切って壁に貼りながら塗装をしよう。筆塗りならドーム球場のように、いつだってプレイボール!というわけです。

クリスチ
クリスチ

1987年生まれ。デザインやったり広報やったり、店長やったりして、今は普通のサラリーマン。革靴や時計など、細かく手の込んだモノが好き。部屋に模型がなんとなく飾ってある生活を日々楽しんでいます。
Re:11colorsというブログもやっています。