
本当は「シルバーのプラスチックを活かして作ろう」と思ってたんだけど、気が変わった。なぜなら「’89年にルマンを走っていたザウバー メルセデス C9はフロントタイヤの上にあるルーバーが板で塞がれていたんだよ!」と説明書にあったから。正直エッチングパーツって扱いが難しいので使いたくなかった。
いや、正直この工程をすっ飛ばしてもちゃんとC9のカタチにはなる(たとえば後年の展示車を見ると、この板が外された状態もよく見る)。けど、こないだ作ったスプートニクのおかげでエッチングパーツと仲良くなれそうな気がしてきたのだ。「エッチングおっかね〜」と言ってると、一生エッチングパーツを扱えない。やってみよう。

ステンレスのエッチングパーツは硬い。「ボディの形状に合わせて曲げてから貼れ」と書いてあるけど、指で曲げてもビヨヨンともとの形状に戻ってしまう。それなら、と強く力を入れたとしよう。ある一定の閾値を超えるといきなりグニャッと折れ曲がって、二度ともとに戻らない。ぶっちゃけそこまでは何度も失敗してきた(そして泣きながらエッチングパーツを捨ててきた)のだが、どうやら言うことを聞いてくれないエッチングパーツは焼きなますことで柔らかくなり、制御しやすくなるらしい。スプートニクの小パーツ(あれは真鍮製のエッチングパーツだったけど)で実験したので、もう大丈夫なはず。



エッチングパーツは「瞬間接着剤でプラパーツにくっつけなければいけないこと」「折り曲げやアールを付ける工程が要求されること」「失敗するとわりとゲームオーバーになりやすいこと」などの要素を持っているので、わりと面倒だ。しかし、プラスチックでは絶対に表現できない薄いものや細かな造形を模型に付加してくれる強力な味方。敬遠しているばかりでは絶対にたどり着けない表現があるんだよね。

せっかくシルバーのボディ色を活かそうと思っていたのだが(繰り返すけど、このエッチングパーツを取り付けないという選択肢も大いにアリだ。ただ、今回は「あ、なんかいまのテンションなら貼れそう」と思ったので貼ってみた)、酸化した鉄板がここにバシッとくっつくと、これはもう全体を銀色に塗るほかなくなってしまった。……とは言え、これまでわりと敬遠してきたエッチングパーツが「焼きなます」という工程でかなり扱いやすくなることを知ったので、行って来いである。
火を入れて、ゆっくりと自然に冷ます。これだけで硬い金属のパーツがすんなり言うことを聞いてくれるようになるということを学んだ私たちは、これから先も「曲げ加工が必要なエッチングパーツ」と仲良くやっていけそうだ。