3Dプリンタで作ったミケランジェロのダビデ像を舐めるように見てたら惚れた話

 これは3Dプリンタで作って塗装したミケランジェロのダビデ像のミニチュアです。教科書で見る有名な彫刻ですよね。今回はこれを作ってじっくりと舐めるように鑑賞しようという話です。

 フィレンツェにある実際の彫刻は5メートルもの巨大な大理石から作られていて、ルネサンスの彫刻家ミケランジェロがたった一人で2〜3年をかけて作ったものです。完成直後に偉い人が視察にきて「鼻が大きいから直して」と言われたミケランジェロはノミをカンカン言わせながら大理石の粉をばらまいて修正するフリをしたそうです。偉い人はすっかり騙されて「わしの言った通りよくなったぞい」と喜んだそうです。いつの時代も偉い人にはわからんのですよ。

▲ 8cm くらいの小さめサイズで印刷。あぁ均整のとれた肉体美…。

 ダビデ像のモチーフは旧約聖書の「ダビデとゴリアテ」という話にあります。身長3メートルもある上に鎧と剣で装備を固めたゴリアテと一騎討ちすることになったダビデ少年は、イスラエル軍の兵士から渡された鎧は重くて動けないからいらね、という理由で脱ぎ捨てて、投石機と小石だけでゴリアテの額を割ります。

 この話は「ジャイアントキリング(番狂わせ)」の語源にもなっているので、西洋美術では殺されたあとのゴリアテの生首とダビデがセットでモチーフになることが多いんですが、ミケランジェロはあえて戦う前の全集中している姿で人間の完璧さを表現しています。ナイスチョイスだなぁ。

 ミケランジェロは15才ではじめて大理石を彫った時から、すでに巨匠レベルの才能を発揮して「神かよ」と称賛されていました。日々プラスチックを研磨している私たちモデラーも神ヤスで磨いてあやかるとしましょう。

 表面処理が終わったら、色を塗っていきたいと思います。世界的に有名な彫刻ではありますが、原作の物語を元にした二次創作という意味でもフィギュアなことに変わりはないのですから、気楽に自分の好きなように塗っていきます。今回は筋肉の陰影がはっきりとわかるようにクレオスのMr.メタルカラーのブロンズを筆で塗装します。Mr.メタルカラーは塗ったあとに擦ると光沢が出るメタリックな塗料。ディティールの多いモデルに使うとお手軽に陰影が強調されるので、彫刻フィギュアはとりあえずこれで塗っておけばいい感じになります。

▲ まさかとは思うがカッラーラ産大理石のわたしを、ブロンズ像にするつもりではないだろうな…?
▲ 筆で塗装してから擦ると本物のブロンズ像のような存在感になりました。箱根あたりにありそうな雰囲気になって親近感がわきます。

 実際に手にしてみると、どの角度からみても美しくて惚れ惚れしてしまいます。ミケランジェロは修行時代に教会で死体を解剖して人体の研究をし、さらに5メートルの像を下から見上げた時に均整の取れたバランスになるように上半身を大きめにつくり、ゆったりと身体がS字を描くこの姿勢は「コントラポスト」という古代彫刻でよくみられるポーズで、ルネサンス期にダヴィンチやミケランジェロによって再ブームがきたそうです。ガンプラでいう「カトキ立ち」みたいなもんかな?

▲ 普段あまり見ることがない背中です。

 タスキのような投石機があるのがわかります。石を握りしめている右手には血管が浮いていて半身の緊張感と半身のリラックスを表現したと言われています。このサイズだとさすがに血管は見えない。

 自分の美術の知識は漫画ギャラリーフェイクでかじった程度だったのですが、当時の様子がわかる資料をあさったりしながら作っているうちに、ダビデ像や大理石彫刻の魅力にハマってしまって、今は西洋美術史について調べるのが楽しくなってます。模型あるあるですね。

 今回使ったデータは美術品を3Dスキャンしてオープンにデータを共有する活動をしているScan the world というコミュニティから拝借しました。誰でも利用可能ですので、是非3Dプリンタで印刷してこの美しさの塊をいろんな角度で(これ重要)堪能してみてください!

Scan the World ミケランジェロのダビデ像

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普段はプログラムを書いている42才。模型でガチ鬱を回復した経験から模型を愛してやまない。