未踏の解像度と質感で迫る衝撃的写真集/眺めるだけで、飛行機のプラモデルが100倍うまくなります。

 最初に結論を書いてしまおう。もしあなたがこれからの人生において、ジェット戦闘機のプラモをひとつでも作るつもりがある、あるいは作るかもしれないのならば、この写真集を手許に置いておくべきだ。少なくとも私は、この写真集をめくりながら30回は絶叫し、そして一生手放さないことを誓った。

 日本の美しい景色をバックに飛ぶグラマラスなシルエット、艶めかしいアウトライン。縦横に走るパネルラインとさまざまな汚れ。人間の手でタッチアップされた塗装の痕までが手にとるように見えるこれらの写真は、「資料性」という使い古された尺度で測ることすらバカバカしくなるほど美しく、ドラマチックで詩的だ。これをパラパラとめくれば必ずや「同じ飛行機でも、条件が異なればここまで違う表情を見せるものなのか」と驚嘆し、魂が震えるだろう。

 日本人空撮カメラマンとしてあまりにも有名な徳永克彦氏が航空自衛隊の飛行開発実験団とタッグを組み、F-4EJ、F-15J、F-2A/B、C-1、C-2等すべての初号機を揃えて腕利きのテストパイロットたちが駆ったことで実現したこの企画……という野暮ったい説明よりも、帯に入れられた樋口真嗣氏の推薦文が私達に深い深い共感を与えてくれる。

 もしあなたが「飛行機模型を作るということは、実機のカタチやディテールを追い、実物そっくりの色を塗ることだ」と思っているのなら、この写真集はその概念を大きく拡張してくれることだろう。この本に掲載された写真たちは、実機のカタチをどうやって見るのか、ディテールはどの距離においてどのように見えるのかを教えてくれるだけにとどまらず、光線状態はもちろん、季節ごとに移ろいゆく地面の色すら反映して、図面や指示書からは絶対に読み取れない千変万化の表情を克明に記録している。

 何よりも衝撃的なのは、飛行機を覆う色調とツヤに対する認識がガラリと変わることだろう。プラモの説明書で指定された塗料の番号はたしかに有用な指標かもしれないが、どうしてその色を塗らなければいけないのか、そしてより実感的に見せるためには何を強調しなければいけないのかは「本物がどう見えるか」を知ることでより深い説得力を伴うことだろう。

 ルーチンワークになりがちなプラモ製作の作法の手前で「私は飛行機のどんな魅力を模型で表現したいのだろうか」と立ち返ることのできる一冊。そしてなによりも「いますぐに飛行機模型を作りたい!」というモチベーションがモリモリと湧いてくる快作である。値段以上の価値があると断言するので、みなさんも、ぜひ。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。