滝沢聖峰のマンガに学ぶ、ブンドドのイマジネーション。

 組みかけのプラモ、完成したプラモ、手に持って「ブーン……ドドド」と遊ぶのがブンドド。そこに見えている景色は超かっこいい戦闘シーンのはずですが、自分が全く知らない景色を夢で見ることができないように、戦いの景色を見たことがなければかっこいいブンドドはできません。

 滝沢聖峰の最新作『シャーズパイロット』は飛行機模型専門誌の『スケールアヴィエーション』に収録されたものを中心にまとめられています。タイトルのとおり、イラン空軍のF-14の活躍をはじめ、古今東西のさまざまな飛行機とそのパイロットをめぐる数奇なエピソードが氏の軽やかながら精緻なタッチで描かれていますが、「うまいなぁ」と感心するのは絵の力だけでなく、想像力のたくましさです。

 全ての記録が残されているわけではない戦闘機の活躍。断片的な情報から「こうであったのかもしれない」と展開されるのは戦記マンガならではの楽しみ。ただ、滝沢聖峰のマンガには、短編なのに映画を見た後のようなどっしりとした読後感があり、「ああ、この人はマンガという手段を使って、飛行機をブンドドするのがひたすら巧いなぁ……」と、改めて感じ入るところがあります。

 また、二次大戦機だけでなくジェット戦闘機についても「この話、本当かな……それとも創作なのかな……」と思ってしまうようなドラマティックなエピソードに満ちあふれているのも嬉しいところ。意外な機体の取り合わせ、意外な場所での意外な機体の活躍は、手垢の付いた自分の飛行機へのイメージをサッと洗い流してくれるような新鮮さがあり、プラモを作るモチベーションをグッと引き上げてくれます。

 様々な角度から描かれた飛行機の姿と、そこに流れる儚くもロマンティックな物語の数々を読む。マンガというメディアにしか許されないテンポと構図の良さは「飛行機模型を作ってみたいな」と思っている人にこそ読んでもらいたい内容となっています。ここに描かれたエピソードからキットを選んでもよし、自分の好きな飛行機にマンガのエピソードを乗せてみてもよし。イマジネーションを豊かにし、最高のブンドドをするために。心からオススメの一冊であります。

<em><a href="/author/kalapattar/">からぱた<br></a></em><a rel="noreferrer noopener" href="https://twitter.com/kalapattar" target="_blank">@kalapattar</a>
からぱた
@kalapattar

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』http://wivern.exblog.jp の中の人。