インターネットとグローバリゼーションが発展した現在、国の垣根を超えて様々な料理や音楽を当たり前のように日々楽しむことが出来ますが、初めて異国の「文化」に触れた時はいつだっただろうとふと立ち止まってみました。
一言で「文化」と言っても、世界三大料理(中華料理·フランス料理·トルコ料理)を代表とした食文化やケルト音楽やブルガリアの聖歌隊、現在のヒップホップやR&B、ブルースなどの源泉であるブラックミュージックなどの音楽を始めとした芸術分野など多岐に渡ります。
こうした中で「プラモデルの製作と通ずる文化は何か」に焦点を定めて考えた際に鍵を握るヒントとなるのは「モータリゼーション(自動車が移動手段から生活必需品化した過程)」だと気付きました。私が異国の自動車文化に初めて触れたのはベルギーの作家エルジェ(本名:ジョルジュ·レミ)によるコミックス『タンタンの冒険』でした。

自動車の大衆化の象徴である「T型フォード」が登場したのが1908年であり、作者が誕生したのがその一年前の1907年生まれ。没年の1983年まで、彼の生涯は車と共にあったと言っても過言ではありません。実際に作中ではブガッティtype35やアルファロメオP3を始めとするレーシングカーが鮮烈な印象を残し、シトロエン2CVやDS19、ルノー4CVから当時の風景を見て取ることが出来ます。

ではなぜ『タンタンの冒険』がプラモデルと関係性があるのか。それは「プラモデルを自由に塗りたいけれど、どのような色使いを用いればよいのか分からない」という方にとって作中の自動車が着想を得るきっかけや処方箋となる為です。
例えばタミヤの1/35ミリタリーミニチュアシリーズのウィリスジープ。
こちらのキットは元々オリーブドラブで成型されている為に、素材を活かして組み立てることも一興です。
そんなウィリスジープはオリーブドラブを纏い、機関銃やライフルを装備している様は機能美を兼ね備えながらも無骨で冷たい印象を受けます。折角なのでこの機能美を活かしつつ、柔和なイメージを加えたい。そこで参考に『タンタンの冒険』に登場するウィリスジープを見てみると、「燃える水の国」の表紙では太陽の申し子のような赤で颯爽と砂漠を駆け抜けていると思えば、月へと向かう高揚感を感じるロケットの赤と対照的に冷静さを表すような青を纏っていたりと場面に応じてジープの新たな表情を知る事が可能です。そこで実際に塗装し、紙面から立ち現れさせたところ、このようになりました。

使用した塗料はガイアノーツの「フレームアームズ·ガール」カラーシリーズのFG-13スティレット装甲ブルーです。この際に下準備として白を吹くことでより鮮やかな青が生まれます。
こうして出来上がった様を見るとどこか軽やかで、現在のスズキ·ジムニーを代表とした野山を駆けるクロスカントリー車の血がこのウィリスジープにも脈々と流れているのだと感じられます。またこの青は、秋に変わりゆくことにご機嫌斜めな夏が時折起こす夕立前の穏やかな空から筆にパレットに掬い取ったかのようです。
このように説明書にない色に塗ることは道を外れるようで、敷居が高い印象を受けるかもしれません。ですが日常生活の中で目に触れる様々な色に注目してみると、「この色だとこんな印象を受けるな」と考える癖が身に付き、より日々が楽しく色彩感覚も磨かれます。
そうして磨かれた色彩感覚は、PowerPointのスライド作成において見やすく、説得力のあるものが作れるなど様々な場面で発揮されます。
色彩感覚を磨くきっかけとして、プラモデルを作ってみる。そうすれば、きっと世界が広がります。色の三原色に、光の三原色が加わるように。
