
タクシーの車内サイネージで、サカナクションの山口一郎さんが「完コピ――真似ることで見えてくること」について話していました。ギターやダンスの練習でも「完コピ」という言葉をよく聞きますし、テレビ番組にも、短時間でダンスを完コピするコーナーがあります。絵を模写するのも、きっと同じことでしょう。誰かの真似をすることで、知らず知らずのうちに基本的なテクニックが体に染み込んでいく。これって不思議なことですよね。そしてそれは、模型においても同じです。

僕が筆塗りに本格的にハマったのは、ホビージャパンの連載コーナー「筆塗りトライブ」の撮影で、清水圭さんの筆塗りを間近で見せてもらったことがきっかけでした。その筆のタッチや色選びを、家に帰ってすぐに真似しました。もちろん何度も失敗しましたが、筆を動かしていると、ときどき「なんか今の、いい感じじゃないか!?」と思えるタッチが現れます。その感覚を何度も模型の上に再現できるように、とにかく筆を動かしまくりました。

それを繰り返していると不思議なもので、少しずつ「自分はこの感じが好きだな〜」と思える景色や塩梅が見えてきます。清水さんの塗りを完コピするレベルにはまったく至っていません。それでも、完コピを目指した先に「自分」というものが生まれてくるのかもしれません。サカナクションの山口さんも同じようなことを話していて、僕はものすごく共感したのです。

とはいえ、すべてを一度に真似しようとすると、とても長い旅路のように思えてしまいます。だから僕は、心を動かされた模型の「ココだけを、まずは真似してみよう」と、ポイントを小分けにしています。今回は清水さんのスポット迷彩の塗り方を真似したくて、清水さんのHow to本『清水 圭 飛行機模型筆塗り塗装テクニック SIMSONIC DESTRUCTION』を、あらためて開きました。スポット迷彩の詳しい塗り方は、ぜひ本を買って読んでみてください。
初めてこの本を読んだ頃よりも、自分の中で清水式筆塗りの解像度が上がっているので、書かれていることへの理解もさらに深まります。一度技法を真似し、実際に手を動かしたあとで原点へ帰ってくる。そうすることで、以前は見えていなかったものまで見えてくるという良さも体感しました。

筆塗りだけでなく、ウェザリングの加減やデカールを貼るタイミングなど、完成までのさまざまなルートを僕は清水さんから真似しています。それを繰り返すことで、自分が惹かれた「かっこよさ」に、少しずつ近づいていけるのです。

そして完成したのが、こちらです。今回はもう少しだけコッテリと汚したかったので、「ガンダムマーカー リアルタッチマーカー」を使い、各所にフィルタリングや排気汚れを加えています。この方法も、どこかで見たものを「清水式と掛け合わせたら、かっこよくなりそうだな〜」と思って試してみたもの。これまで真似してきたさまざまな技法が、このひとつの模型に集約されているわけです。真似ることは自分を失うことじゃない。自分を発見する行為なんですね。おしまい。