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【レビュー】収斂進化の先に見えた、カーモデルの新しい系統樹/アオシマ 1/24 ワイルド・スピード スープラ

 スジボリがシャープで細かければ「スケールモデルみたい」、色分け済で接着剤不要であれば「ガンプラみたい」、キャラクターモデルなのに単色のプラスチックで固定ポーズだと「ガレージキットみたい」という感想がSNSを駆け抜けていくのをよく観測します。でもちょっと待ってください。スジボリがシャープで細かいキャラクターモデルもあれば、色分け済みのガレージキットもある。なんなら接着剤不要のスケールモデルだって最近はよく見かける。つまり、モチーフがキットのパーツの有り様を定めるなんつーことはないし、その逆もない。何が、どんな方法で分解され、再構築されるかという点において制約などない、というのがプラモデルのミソです。

 こう書くと「そうだそうだ、どんなモノがどんなプラモデルになっていようが”自由”なんだ!」という声が聞こえてきそうですが、果たしてそうでしょうか。飛行機、クルマ、戦車、フネ、ロボットなどなど、それぞれいま主流となっているプラモデルのスタイルというのはある種の収斂進化(それが技術的な理由によるものか、経済的な理由によるものなのかはみんなで考えよう)の結果であり、あえてそうではない方法を選ぼうとすれば、進化/あるいは変化の過程において昔捨て去った何かをまた拾って磨き上げるか、これまで試されてこなかった方法に挑戦し、モノにしなければいけない。これはメーカーにとってもユーザーにとってもかなりカロリーのかかることです。

 かつてアオシマが1/32スケールのカーモデル(楽プラ)で色分け済み/接着不要のカーモデルシリーズをスタートしたときは「安い価格を実現する」ということと「実車の再現度を大きさの制約と天秤にかけてうまいところに着地させる」というふたつの工夫が非常によろしいな、と思いました。シャシ裏がまっ平らなのも、タイヤのトレッド面がツルツルなのも、ステアリングが切れないのも、1/32スケールでこの価格ならそりゃそうなるよね、という納得感があり、これらをたくさん組んでいると「巷で売られている完成品ミニカーを組み立てるような感覚」として捉えればちゃんと納得できるものになります。反面、1/24スケールで各社が鎬を削る精緻さやビルドの楽しみを1/32の楽プラにも盛り込もう……という遊び方はあくまで手練れのモデラーに委ねられ、それはそれでまた違う楽しみを生み出したとも言えましょう。

 そんなアオシマが1/24スケールで「色分け済み/接着不要」というカーモデルシリーズを展開し、これまでいくつかのキットが世に送り出されてきました。1/24スケールは従来的な「塗装や接着を前提としたカーモデル」の主戦場であり、同社もそれらに見劣りしないようシャシ裏の彫刻を入れ、ステアリング機構を組み込み、あれやこれやと工夫をこらした組み立て手法をその都度設計することになるわけですが、やっぱりそこにはどうしてもチグハグさがあったように感じられます。ビタッとパーツを固定したければやはり小さくて強度のないツメよりも接着剤のほうが秀でているし、ディテールと色彩を再現するならプラスチックの色やシールに頼るよりも塗装をしたほうがむしろ楽ちんだなと思える点もあります。
 しかしこれはあくまで接着や塗装に慣れ親しんできたモデラーとしての感想であり、やはりニッパーやピンセットといった最低限の工具だけでカーモデルにトライしてみたいというユーザーにとっては楽プラこそが初めてのカーモデルであり、これがきちんと完成すれば「良いプラモデル」なのだ、ということを友達に教わったりもしました。

 で、最新キットであるところのワイルド・スピード JZA80 スープラはついに1/24の接着/塗装が不要なモデルとして独立した(つまりほかのどんなメーカーのキットとも違う)組み味を手に入れ、「これはこれでひとつのジャンルが発生したのだな……」という感想を持つに至りました。つまり、「色分け済みのスナップフィットモデルでよかった〜」と初めて素直に感じられたのがこのスープラなのだということ。
 車種選定やプロポーションの確かさはもちろん、アオシマが1/32と1/24の両方のスケールで培ってきた設計手法、シールやデカールといったマテリアルの使い所、ツヤを使い分けることによる質感表現、そしてパーツの固定方法の合理化などなど、これまでのモデルで「このキットはここがGOODだな」というポイントを寄せ集め、チグハグさを極力小さくしようと試みていることがわかります。

 とくに室内の賑やかさは『ワイルド・スピード』の車両であることを差し引いても非常に模型的な盛り上がりに満ちており、色分け済みのプラスチックパーツやシールの使い方から我々がどうしても連想してしまう「キャラクターモデルとしての味わい」を存分に活かした内容になっています(ブライアン・オコナーもこの80スープラも映画のキャラクターだもんね)。メッキパーツとクリアーパーツの組み合わせによるヘッドライトもきちんとボディにフィットするし、リアコンビネーションランプは何層にも重ねたパーツと透過性/反射性のシールを組み合わせることで非常に実感のある仕上がり。これらは接着/塗装を要求するよりも明確に秀でたポイントと言っていいでしょう。

 これを「オーセンティックな接着&塗装で雑誌作例の如く仕上げたい」となれば、おそらく従来的な模型の作り方をそのまま適用してもうまくいかないはずです。出来上がるのが1/24の自動車だから、これもまごうことなきカーモデル。しかし、その設計思想や作り方、そもそもどんな姿を目指して手に取り、どう楽しむのか……という点においてはこれまでのカーモデルと全く違った存在なのだと改めて確信した次第。未来のカーモデルがことごとく新しいスタイルになっていくのか、あるいは部分的に従来型のキットと共生関係になっていくのか。進化の系統樹の分かれ目を残す示準化石として、「ワイスピのスープラ」は歴史に書き留めておきたいキットのひとつと言えるでしょう。

からぱたのプロフィール

からぱた/nippper.com 編集長

模型誌の編集者やメーカーの企画マンを本業としてきた1982年生まれ。 巨大な写真のブログ『超音速備忘録』https://wivern.exblog.jp の中の人。

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