最新記事やプラモデル情報を毎日お届け!
follow on Xをフォロー!

【レビュー】ランナーから溢れる切迫感!完全新規開発で見据えた造形村の執念を読み解く/造形村 SWS 1:32 五式戦闘機 一型乙

■本記事はボークスより商品の提供を受けて作成しています(PR)

 さきの大戦時、日本には独立した「空軍」が存在せず、陸軍と海軍がそれぞれ独自の思想で航空機を開発していました。なかでも陸軍の単発単座戦闘機は、一式(隼)、二式(鍾馗)、三式(飛燕)、四式(疾風)と、皇紀の下ひと桁に合わせて順当に系譜を重ねていきます。しかし、その系譜のしんがりを務めるはずの「五式戦闘機」だけは、当時の公式文書にその名が明確に記されていません。計画名称は「キ100」というあまりにもキリの良い数字。前作までのような輝かしい愛称も与えられず、正式な命名手続きを踏む余裕すら失われたギリギリの戦況のなかで、電撃的に前線へと投入された……という歴史を持っています。

造形村 SWS 1/32 川崎 キ100 五式戦闘機一型乙

 Bf109の親戚とも言える水冷エンジンの飛燕の胴体に、急遽空冷エンジンを載せ替えたら、見違えるような傑作機になった。このドラマチックな背景があるゆえに、数多くの模型メーカーがこれまでにも五式戦を製品化してきました。だからこそ、造形村のSWSシリーズの最新作として、「五式戦闘機 一型乙」が完全新規金型(過去製品からの流用パーツなし!)、しかも1/32というビッグスケールで発表されたときは本当に驚きました。しかもランナーを眺めてみると、飛燕へのパーツ流用をほとんど考えていないと思われる潔い構成。そう、このキットは五式戦という飛行機が持つ、切迫感を紐解くために作られた執念の塊なのです!


 1/32スケールであれば、パーツをさらに細分化して三式戦(飛燕)との共通化を狙うこともできたはずです。実際、過去に他社のキットを組んだときは、共通パーツと新規パーツを見極めながらそのコンセプトの違いを並べて楽しむ楽しさがありました。しかし、このSWS五式戦はむしろ今まで以上にシンプルかつクリーンに整理されています。過剰な分割を廃し、一目で役割がわかるようにまとめられたランナーは、結果として組み立てやすい印象になっています。

 とはいえ、決して大味になっているわけではありません。五式戦自体のバリエーションにはしっかり目配せされたパーツ配置になっています。たとえば座席。シートベルトのディテールがリアルに一体化された座面だけでなく、ベルトなしのプレーンな座面も付属しています。パイロットフィギュアを乗せるか、あるいはアフターパーツのベルトを奢るかで選択できるようになった、嬉しい仕様です。

 さらに個人的な感覚かもしれませんが、パーツの成型がこれまで以上にシャキッとシャープに、磨きがよくなっている印象を受けます。プラスチックという硬い素材でありながら、エルロン(補助翼)などの羽布貼り(布張り)部分の表現は、ピンと張った布の展張感が「これでもか!」というほど柔らかに表現されており、ランナーについた状態のパーツを見ているだけでうっとりしてしまいます。

 パーツをじっくり眺めていて、まず目が釘付けになるのが飛行機の心臓部、空冷の「ハ112-II(金星)」エンジンです。もともと飛燕に積まれていた水冷の「ハ140」エンジンは、陸海軍が別々にライセンス生産し、互いにノウハウの融通もしないという「当時の縦割り組織の仲の悪さ」の象徴のような存在でした。しかし、水冷エンジンの不具合多発や生産遅延によってダブついてしまった飛燕の胴体を救ったこの空冷・金星エンジンは、実は海軍の艦上爆撃機「彗星」の水冷から空冷への転換(三三型)でも全く同じように採用された、いわば陸海軍の窮地を同時に救った架け橋のようなパワープラントなのです。

 シリンダーブロックの内部にはSWSシリーズではおなじみの表現として、ピストンやロッドのモールドまで刻まれています。「接着してカウリングを閉じてしまえばもう二度と見られない」と分かっていても、これが激しく上下運動をして出力を得るんだよ、というテクノロジーの一端をあらかじめ魅せてくれる演出に胸が熱くなります。

 さらに面白いことに、ランナーの端の余白を組み立てると、エンジン単体を取り外して展示できる「ディスプレイ台」になる構造を発見。金星エンジンが持つ歴史のストーリーも含めて、組む前から「しばらくこれだけで飾って堪能しよう」と思わせてくれる遊び心が詰まっています。

 主翼のランナーに目を移すと、形状こそ飛燕の面影を強く残していますが、面白いのはその同じ枠の中に、五式戦特有の機首上面や下部のパーツが同居している点です。正式な命名手続きすら省かれるほどの切迫した状況のなかで、川崎の設計陣はどのように舵面を動かす仕組みを詰め込んだのか。主翼のパーツにはコクピットの底面フロアが一緒についてくる面白い構造になっていますが、そこに配置された操縦桿から、翼や機体後部へと伸びていく「動索(コントロールケーブル)」が、すでにパーツの段階でカチッとモールドされています。

 エルロン(補助翼)に向かって伸びる細いパイプやロッドのラインを見ていると、実機の機銃の機関部や、燃料タンクの容積を絶妙に避けるために、この位置を通らざるを得なかったのだという設計の意図が見えてきます。

 コクピットの計器盤のパーツにも、造形村らしいこだわりが光ります。メーターの奥深いガラス面の質感を表現できる「クリアーパーツ」と、デカールを貼ってハッキリと視認性を高められる「通常のグレー成型パーツ」の2種類が丸ごと用意されており、選択式になっています。

 この知的なパッケージングをさらに盛り上げてくれるのが、SWSおなじみの説明書。組み立てに急ぐときは図を見て、接着剤が乾くのを待つ休憩中には解説をじっくり読む……。ただの組み立て手順書ではなく、じつに上質で知的な時間が箱を開けた瞬間から約束されているのです。また、「造形村 コンセプトノート SWS No.XIII 川崎 キ100 五式戦闘機 一型甲/乙 『五式戦』」もキットと同時発売! 実機資料、製作の詳細、各型の違い……「SWS 1/32 五式戦」だけでなく、五式戦の時代背景や、設計思想の理解も深まる一冊です。こちらも合わせて、五式戦のことを隅々まで味わえる至高のキットとなっているので、ぜひゲットしてください!

造形村 SWS 1/32 川崎 キ100 五式戦闘機一型乙

けんたろうのプロフィール

けんたろう

各模型誌で笑顔を振りまくフォトジェニックライター。どんな模型もするする食べちゃうやんちゃなお兄さんで、工具&マテリアルにも詳しい。コメダ珈琲が大好き。

関連記事